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第 356 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年11月27日]
症例8 60歳代 男性 : 尿閉、発熱
多発血管炎性肉芽腫症
granulomatosis with polyangiitis(GPA)


 疾患概念

➀上気道と肺の壊死性肉芽腫性病変
➁腎の壊死性半月体形成腎炎
➂全身の小・中型血管の壊死性肉芽腫性血管炎
この3つを特徴とする難治性血管炎である。

初めに報告したWegener はナチス党員であったこともあり、Wegener 肉芽腫症からGPA に名称が変更されている。

・採血検査で抗好中球細胞質抗体(ANCA)の測定がきわめて有用である。
・PR3-ANCA は活動性のGPA の80%以上に認められる。
ただし、GPA の一部でMPO-ANCA が陽性になる症例があり、PR3-ANCA が他の血管炎で陽性になることもある。
PR3-ANCA は他の自己免疫疾患、炎症性腸疾患、感染症でも陽性になることが報告されている。

【肺病変】
・肺病変はGPA の90%に見られる。
・結節、腫瘤が多い。
・結節/腫瘤の大きさは数mm〜10cm を超えることもある。
・胸膜直下や気管支血管周囲に分布することが多い。
・鑑別はseptic emboli、真菌感染、血行性転移 など。

【泌尿生殖器病変】
・泌尿生殖領域では前立腺炎や精巣炎が多い。
・その他、精巣上体炎、尿管狭窄、腎腫瘤、陰茎潰瘍などの報告がある。
・男性の症例がほとんどで、女性生殖器病変の報告はきわめてまれ。


 GPA の前立腺炎

・頻度はGPA の2.3〜7.4%とまれ。
・症状として頻尿、排尿障害、血尿が多く、尿閉の報告もある。
・初発、再発のいずれでも見られる。
・他の血管炎においても前立腺炎の報告があるが、GPA での報告が最も多い。
・前立腺病変の場合、前立腺は腫大し、内部に膿瘍のような低吸収域や低エコー域を示す症例が報告されている。
・腎臓に低吸収の腫瘤が多発した症例の報告も見られる。

治療法
GPA の寛解導入療法として
プレドニゾロン+シクロホスファミドが基本である。
本症例は病勢が強く、この治療法で寛解導入が困難で、Rituximab 療法により寛解した。



 Take home point

前立腺炎を合併したGPA。
GPA は通常知られている上気道(鼻副鼻腔)、下気道(肺)病変の他に多彩な全身所見を示すことがある。
診断を進める上で留意する必要がある。


 


 

 参考文献

  • Tsiodras S, et al. `Prostate Abscess' as the Initial Manifestation of Granulomatosis with Polyangiitis. Urol Int 13: 2014.
  • Dufour JF, et al. Urogenital manifestation in Wegener granulomatosis: a study of 11 cases and review of the literature. Medicine 91:67-74, 2012.
  • Ruiz Carazo E, et al. Multiple renal masses as initial manifestation of Wegener's granulomatosis. Am J Roentogenol 176: 116-8, 2001.
  • Martinez F, et al. Common and uncommon manifestations of Wegener granulomatosis at chest CT: radiologic-pathologic correlation.Radiographics. 32: 51-69, 2012.
  • Castaner E, et al. When to suspect pulmonary vasculitis: radiologic and clinical clues.Radiographics 30: 33-53, 2010.

 


 


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