多発血管炎性肉芽腫症 granulomatosis with polyangiitis(GPA) |
疾患概念 |
➀上気道と肺の壊死性肉芽腫性病変
➁腎の壊死性半月体形成腎炎
➂全身の小・中型血管の壊死性肉芽腫性血管炎
この3つを特徴とする難治性血管炎である。
初めに報告したWegener はナチス党員であったこともあり、Wegener 肉芽腫症からGPA に名称が変更されている。
・採血検査で抗好中球細胞質抗体(ANCA)の測定がきわめて有用である。
・PR3-ANCA は活動性のGPA の80%以上に認められる。
ただし、GPA の一部でMPO-ANCA が陽性になる症例があり、PR3-ANCA が他の血管炎で陽性になることもある。
PR3-ANCA は他の自己免疫疾患、炎症性腸疾患、感染症でも陽性になることが報告されている。
【肺病変】
・肺病変はGPA の90%に見られる。
・結節、腫瘤が多い。
・結節/腫瘤の大きさは数mm〜10cm を超えることもある。
・胸膜直下や気管支血管周囲に分布することが多い。
・鑑別はseptic emboli、真菌感染、血行性転移 など。
【泌尿生殖器病変】
・泌尿生殖領域では前立腺炎や精巣炎が多い。
・その他、精巣上体炎、尿管狭窄、腎腫瘤、陰茎潰瘍などの報告がある。
・男性の症例がほとんどで、女性生殖器病変の報告はきわめてまれ。
GPA の前立腺炎 |
・頻度はGPA の2.3〜7.4%とまれ。
・症状として頻尿、排尿障害、血尿が多く、尿閉の報告もある。
・初発、再発のいずれでも見られる。
・他の血管炎においても前立腺炎の報告があるが、GPA での報告が最も多い。
・前立腺病変の場合、前立腺は腫大し、内部に膿瘍のような低吸収域や低エコー域を示す症例が報告されている。
・腎臓に低吸収の腫瘤が多発した症例の報告も見られる。
治療法
GPA の寛解導入療法として
プレドニゾロン+シクロホスファミドが基本である。
本症例は病勢が強く、この治療法で寛解導入が困難で、Rituximab 療法により寛解した。
Take home point |
前立腺炎を合併したGPA。
GPA は通常知られている上気道(鼻副鼻腔)、下気道(肺)病変の他に多彩な全身所見を示すことがある。
診断を進める上で留意する必要がある。
参考文献
戻る |