メトロニダゾール脳症 metronidazole-induced encephalopathy |
頭部CT:意識障害の原因となりそうな所見なし |
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頭部MRI | |
ADCの低下なし | |
画像所見のまとめ |
・小脳歯状核, 下オリーブ核, 赤核, 脳梁膨大部, 錐体路
・両側対称性のFLAIR/T2WI/DWI高信号
・ADC値 上昇/低下なし
・その他シーケンスで異常信号なし
画像上の鑑別診断1) |
小脳歯状核がT2WIで対象性に高信号 | 脳梁膨大部に異常信号 | |
・脳腱黄色腫症 ・Wilson病 ・L-2-hydroxyglutaric aciduria ・熱中症 ・神経Sweet病 ・肝脳変性症(肝性脳症) ・メトロニダゾール脳症 ・ヘロイン中毒 ・ミトコンドリア脳症 ・臭化メチル中毒 ・Langerhans組織球症 ・Leigh脳症 ・Wernicke脳症 |
・神経線維腫症1型 ・Erdheim-Chester病 ・グルタル酸脳症 ・Refsum病(乳児型) ・メープルシロップ脳症 |
・低血糖症 ・高置浮腫 ・免疫グロブリンによる脳症 ・Wernicke脳症 ・橋外髄鞘崩壊症候群 ・脳マラリア ・抗痙攣薬の離脱後 ・一過性脳梁膨大部病変 ・DAI ・放射線治療後 ・化学療法(MTX, カモフール, 5FUetc.) ・覚醒剤 ・メトロニダゾール脳症 |
・肝性脳症 → 肝機能障害なし
・低血糖症 → 血糖正常
・橋外髄鞘崩壊症候群 → 血清Naの急激な変化なし
・一過性脳梁膨大部病変 → 歯状核,赤核病変?
・Wernicke脳症 → Vit B1正常、典型的部位(視床内側部、中脳水道周囲、乳頭体、中脳蓋)に異常所見なし
・メトロニダゾール脳症 → 経過、画像所見に矛盾なし
1) 柳下章. 神経内科疾患の画像診断
その後の臨床経過
・メトロニダゾール脳症を疑い、投与中止
・Wernicke脳症も否定できなかったためVitB1を投与 → 後日VitB1は正常範囲内であったことが判明
↓
メトロニダゾール投与中止後、意識障害は徐々に改善
診断:メトロニダゾール脳症
・薬剤使用歴
・臨床経過
・画像所見
・画像上他の鑑別診断の除外
メトロニダゾール脳症 |
・構音障害、歩行障害、小脳失調、頭痛、悪心・嘔吐、意識障害
などで発症1)
・薬剤の中止により症状は速やかに改善
・意識障害など重篤な後遺症や死亡例もあり2)
・総投与量と関連あり(21〜135g)3) →本症例では 79.5 g
・薬剤使用開始から症状出現まで11〜52日, 平均25.4日4) →本症例では53日
・症状出現からMRI所見出現まで3〜38日, 平均13.4日4)
・薬剤の中止により症状は速やかに改善(4〜10日,平均6.7日)4) →本症例は中止後1W後程度から症状改善
1) Kusumi RK, et al. Ann Intern Med, 1980. 93: 59-60.
2) Groothoff MVR, et al. Clin Therapeutics, 2010. 32: 60-64.
3) Bahn Y, et al. J Korean Neurosurg Soc, 2010. 48: 301-304.
4) Kim E, et al. Am J Neuroradiol, 2007. 28(8): 1652-1658.
メトロニダゾール注射薬が2014年9月26日に発売
【適応】
「敗血症など嫌気性菌感染症、
本剤に感性のクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)、
アメーバ赤痢」
・1回500mgを1日3回、20分以上かけて点滴静注する。
・難治性または重症感染症には1回500mgを1日4回投与する。
今後、メトロニダゾール脳症を目にする機会が多くなる・・・かも?
Take home message |
・Metronidazoleの長期投与により、中枢神経症状が出現することがある。
・投与中止により症状改善が見込めるため、本症と診断することは重要である。
・難治性、重症感染症で抗生剤を長期間投与されている患者に中枢神経症状
(構音障害、歩行障害、小脳失調、頭痛、悪心・嘔吐、意識障害)が出現した場合、本症の可能性を念頭に置く。
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