肝細胞癌の自然退縮 spontaneous regression of hepatocellular carcinoma |
所見まとめ |
現病歴:アルコール性肝障害
血液所見:AFP 58.6ng/ml, L3分画 33.4%
CT所見
・S2の単発性腫瘤
・「古典的」の触れ込みと異なり、辺縁優位の弱い早期増強、遅延相でやや染まり込みあり→混合型HCC or ICCの疑いと報告
MRI所見
・fsT2WIでは中心部高信号、fsT1WIでは低信号、DWI高信号ははっきりせず(ただし外側区病変なので信頼性は低い)
・辺縁が不明瞭な印象
・辺縁優位の弱い早期増強効果
・肝胆道相の抜けも境界不鮮明(ただし、背景肝集積弱い)
・明らかな脂肪含有無し(むしろin phaseの方が低い?)
CTとMRIの比較
当院ではMRIの予約待ちが逼迫しているため2週間のインターバルがあったが、その2週間でやや縮小し、張りがなくなった印象
当科の術前診断
CT時点の混合型HCC/ICCの診断を破棄して「肝細胞癌の自然退縮過程」と報告し前医経過の確認をお願いした
→前医CT(当院の1ヶ月前)では早期濃染+脂肪濃度上昇
→このころ、自制内だが心窩部痛発作があった
→腫瘍マーカーも紹介前はさらに高値だった
経過
・腹腔鏡補助下肝部分切除術が施行された。
・硝子化、線維化、出血、多核巨細胞浸潤などの混合した組織(viable tumorなし)
・鍍銀染色では肥厚した肝細胞索様構築の残存あり
肝細胞癌の自然退縮 |
・種々の腫瘍(多血性癌や悪性リンパ腫など)で自然退縮が報告されているが、
肝細胞癌はその中でも報告が多い(頻度は0.X%〜0.0X%程度)
・免疫賦活や全身性炎症などが原因として論じられているが、恐らく複合的と推測される
・当院ではDM症例で10例程度の経験【免疫変動、あるいはDM vasculopathyが原因?】
Oquiñena, Susana, et al. Digestive diseases and sciences 54.5 (2009): 1147-1153.
Huz, Jonathan I, et al. HPB 14.8 (2012): 500-505.
どうやって画像診断するか? | |
・実際問題単回検査で診断するのは容易でない ー入念な経時比較が必要 ・早期濃染の(部分的)欠如 ーにもかかわらず周囲の反応性変化(シャント、脂肪濃度上昇など) ー腹痛などの臨床像 |
参考文献
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