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第 369 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年6月16日]
症例1 30歳代 男性 : 胸痛
胸腺カルチノイド
thymic carcinoid


 画像所見まとめ

・前縦隔の腫瘤
 中心部の造影不良:出血壊死s/o
 辺縁の造影効果
 FDG uptake(+)
・両側副甲状腺腫瘤
・膵腫瘤(多血性s/o)
・胆石、左腎結石

 

 胸腺カルチノイド

【カルチノイドの定義】
・全身に存在する神経内分泌細胞から発生する腫瘍
・近年は、神経内分泌腫瘍に分類

【胸腺神経内分泌癌の分類】
高分化型 低分化型
定型的
カルチノイド
非定型的
カルチノイド
大細胞型
神経内分泌癌
小細胞癌

 

【特徴】
➀ 他のカルチノイドとの比較
 ・発生頻度が低い
   全カルチノイドの6%
   縦隔腫瘍の3%
 ・男性に多い  男:女= 3 : 1
 ・MEN1を合併(25%)1)
 ・非定型(80%)>> 定型 2)
   悪性度が高い
   予後不良 → MEN1の主な死因
   FDG uptake (+) 3)
1)天野 寛之. 日呼吸会誌. 2010;48:855-859.
2)上野 克仁. 日呼外会誌. 2010;24:181-186.
3)Groves AM. AJR Am J Roentgenol. 2004;182:511-513.

➁ MEN1合併例:孤発性との比較
 ・男性に多い(89-100%)4)
 ・Heavy smokers(85%)5)
 ・副甲状腺機能亢進症を高率に合併 1)
  副甲状腺機能亢進症(92%)>膵神経内分泌腫瘍>>下垂体腫瘍
 ・傍腫瘍性内分泌症候群の頻度が低い
  ほとんどは弧発性
4)Gibril F. J Clin Endocrinol Metab. 2003;88:1066-1081.
5)Ferolla P. J Clin Endocrinol Metab. 2005;90:2603-2609.

【画像所見】
・CT
  内部性状:均一/不均一
  辺縁:整/不整
  石灰化:(-)/(+)
  造影効果:(+)
・MRI
  T1WI↓、T2WI↑
  出血:T1・T2WI↑6)
・FDG-PET
  Uptake (+):SUVmax 2-5 6)
6)柳田 正志. 日呼外会誌. 2010;24:181-186.

非特異的

 

【鑑別疾患】
・胸腺腫
・胸腺癌
・悪性リンパ腫
・Germ cell tumor
・転移

 

鑑別困難

 

 

 鑑別診断

・本症例は、MEN1に合併した胸腺カルチノイドである
・胸腺カルチノイドのCT/MRI/FDG-PET所見は非特異的であり、それだけで診断するのは困難
・ただし、高Ca血症と両側副甲状腺腫瘤から、副甲状腺過形成を疑うことができる
 胆石や腎結石もそれを支持する所見である
・また、多血性膵腫瘤から膵神経内分泌腫瘍の可能性を考える
・これらの所見を統合しMEN1を疑い、合併頻度の高い胸腺カルチノイドを鑑別に挙げる
・その他の鑑別としては、縦隔内異所性副甲状腺腫がある
・両者の鑑別は、ソマトスタチン受容体シンチグラフィで可能である

 

前縦隔腫瘤の最終鑑別
  PET シンチグラフィ
FDG MIBI ソマトスタチン受容体
 副甲状腺腫 ×
 胸腺カルチノイド

 

 

 Conclusion

・MEN1に合併した胸腺カルチノイドの1例を報告した
・胸腺カルチノイドのCT/MRI/FDG-PET所見は非特異的である
・ただし、Labo dataや他の画像所見が診断の一助となる

 



参考文献

  • 天野 寛之. 日呼吸会誌. 2010;48:855-859.
  • 上野 克仁. 日呼外会誌. 2010;24:181-186.
  • Groves AM. AJR Am J Roentgenol. 2004;182:511-513.
  • Gibril F. J Clin Endocrinol Metab. 2003;88:1066-1081.
  • Ferolla P. J Clin Endocrinol Metab. 2005;90:2603-2609.
  • 柳田 正志. 日呼外会誌. 2010;24:181-186.