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第 369 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年6月16日]
症例7 30歳代 女性 : 心窩部痛
抗リン脂質抗体症候群に合併したBudd-Chiari 症候群
Budd-Chiari syndrome associated with anti-phospholipid antibody syndrome


 画像所見のまとめ

・肝外側区の萎縮、動脈相〜平衡相の造影遅延、平衡相(後期相)での遅延性造影増強効果。
・左肝静脈の描出不良、中肝静脈中枢部の途絶。–門脈、動脈の描出は良好
・グリソン鞘の浮腫性変化(中肝静脈、左肝静脈領域)
・腹水貯留
・肝門部のリンパ節腫大

・肝S7の肝血管腫
・両肺の気管支血管束周囲のすりガラス影
・左総腸骨静脈の狭小化
・左下腿の浮腫性変化
・左乳房の結節

 

 鑑別疾患

・血管性病変
 鬱血肝
 肝静脈閉塞Budd-Chiari症候群
 肝中心静脈閉塞症(veno-occlusive disease)
 肝梗塞
・腫瘍性病変
 びまん型肝細胞癌
 転移性肝癌
・炎症性病変
 原発性硬化性胆管炎
 肝硬変

 

 Budd-Chiari症候群

【定義】
肝静脈の主幹あるいは肝部下大静脈の閉塞や狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群
【疫学】
有病率 人口100万人当たり2.4人
男女比 1.6:1 平均発症年齢 男性36才、女性47才
【分類】
原発性:膜様閉鎖(先天性形成異常、後天説も)
続発性:血栓形成、血管形成異常、腫瘍による圧排
門脈血行異常症の診断と治療のガイドライン(2013年)
難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jp/entry/317

【発症様式】
急性型:欧米に多い
 予後不良
 腹痛、嘔吐、急速な肝腫大及び腹水にて発症。
 1-4週で肝不全により死の転帰をとる

慢性型:アジアに多い
 無症状で経過
 門脈圧亢進症
 下腿浮腫、腹水、腹壁皮下静脈怒張

 

 まとめ

・本邦では稀な急性型のBudd-Chiari症候群を経験した。
・肝静脈もしっかり確認することが重要と考えられた。



参考文献

  • K.V. Narayanan Menon: The Budd−Chiari Syndrome. n engl j med 350;6 www.nejm.org february 5, 2004
  • Maha Torabi: CT of Nonneoplastic Hepatic Vascular and Perfusion Disorders. RadioGraphics 2008; 28:1967−1982
  • Delei Cheng: Comparative study of MRI manifestations of acute and chronic Budd−Chiari syndrome. Abdom Imaging (2015) 40:76−84