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第 369 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年6月16日]
症例8 10歳代 女性 : 前胸部痛
縦隔大細胞型B 細胞リンパ腫
Mediastinal large B-cell lymphoma


 画像所見のまとめ

・前縦隔の最大長径16cm程の巨大腫瘍。
・内部に微細な石灰化を伴う。
・はっきりとした脂肪成分は含有しない。
・嚢胞性成分を伴う。
・ダイナミック造影では、腫瘍の大部分は造影効果は漸増性で、部分的にwashoutを伴う成分がある。
・FDG集積は高度(SUVmax=19.8)。
・縦隔・肺門に腫大リンパ節は認めない。
・右少量胸水貯留を伴う。

 

 鑑別疾患

・悪性胚細胞性腫瘍:90%男性。Non-seminomaの場合、90%でAFPまたはβ-HCGが高値になる。
・悪性リンパ腫

SUVmax高値を呈する前縦隔腫瘍の鑑別として・・・
・脂肪肉腫:男性に多い。50歳以降に多い。
・MFH:稀。中年-高齢発症(50-70代)。
・骨外骨肉腫:40歳以降に多い。縦隔発生は極めて稀。
・縦隔横紋筋肉腫:小児にも発生するが極めて稀。
・胸腺結核:非常に稀。HIV感染による免疫低下と関連性があるとされている。

 

 Primary Mediastinal large-B-cell lymphoma

・発症年齢の中央値は37歳(153人;13歳-82歳)。
・LDHの上昇が多い(77%)。 
・巨大腫瘍が多い(≧10cm)。
・胸水や心嚢液貯留を伴う事が多い(50%)。
K.J.Savage et al. Ann Oncol. 2006;17:123-130
CT画像所見(25例)
・嚢胞性成分:11例(44%)。
・石灰化:2例。
・胸水貯留:14例(33%)。(右側のみ5例、左側のみ4例、両側性5例)。
・心嚢液貯留:8/25例(32%)。
Shaffer K et al.AJR 1996;167:425-430

 

 まとめ

・前縦隔腫瘍を診断する際に、悪性リンパ腫や胚細胞性腫瘍は、dynamic撮影にてwashoutを呈する頻度が低い。
・FDGの集積が高度な場合、胚細胞性腫瘍や悪性リンパ腫を含む悪性腫瘍が疑われる。
・石灰化を伴っていても悪性リンパ腫(縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫)の除外はできない。




参考文献

  • Takahashi K et al. J Magn Reson Imaging. 2010;32:1325-1329
  • Yabuuchi H et al. Clin Radiol. 2015;70:1289-1298
  • K.J.Savage et al. Ann Oncol. 2006;17:123-130
  • Shaffer K et al. AJR 1996;167:425-430
  • 西野ら 日呼外会誌 2016;30:31-35