肉芽腫性虫垂炎 granulomatous appendicitis |
その後の経過 |
下部消化管内視鏡検査にて、虫垂口に隆起性病変を認め2回生検を施行するも、確定診断は得られなかった。
盲腸腫瘍の診断にて、腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。
下部消化管内視鏡所見
虫垂から隆起するような結節集合型の30mm大の腫瘤あり |
病理結果
【回盲部切除検体】
虫垂頸部〜先端部および虫垂と接する盲腸の一部に多数の非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫形成を認める。
虫垂のほぼ全域にわたり粘膜固有層に強い好中球・好酸球・形質細胞主体の炎症細胞浸潤が見られる。
盲腸周囲に陰窩膿瘍の形成を伴う粘膜の活動性炎症を巣状に認める。
【リンパ節】
転移は陰性。リンパ節内や血管周囲に同様の肉芽腫が散見される。
【特殊染色・免疫染色】
Ziehl Neelsen染色:抗酸菌は認めない
BCG免疫染色:陰性
TB1免疫染色:陰性
↓
肉芽腫を伴う活動性炎症
悪性所見なし
診断:肉芽腫性虫垂炎 Granulomatous appendicitis
(自覚症状なし。採血所見に異常なし。CTにて他の臓器に所見なし。虫垂に異物を認めない。結核の検査は陰性。)
(→特発性肉芽腫性虫垂炎疑い)
肉芽腫性虫垂炎 |
疫学:男性>女性(5例:1例1), 4例:1例2))
平均年齢 27歳(18〜37歳)1), 30.2歳(14〜39歳)2)
症状:右下腹部痛(100%)、発熱(100%)、食欲不振(50%)、嘔気(50%)、亜急性の経過(83%)1)
原因:感染(真菌、偽結核エルジニア菌、結核菌、ブラストミセ ス症、ヒストプラズマ・カプスラーツム、住血吸虫症、放 線菌症、
カンピロバクター、トキソプラズマ、ブルセラ属、 カンジダ症、寄生虫)
異物、糞石による閉塞、粘液嚢腫、腫瘍、憩室炎
全身疾患(クローン病、サルコイドーシス)
頻度と鑑別疾患 | |
急性虫垂炎として切除された969検体のうちで、急性虫垂炎は870例で、26例は虫垂に病変を認めなかった。 残りの73例の内訳が上記。3) |
急性虫垂炎として切除された1492例のうちで、急性虫垂炎は1162例で、虫垂以外の疾患であった症例が271例であった。 残りの59例の内訳が上記。4) |
肉芽腫性虫垂炎 7例 10% |
肉芽腫性虫垂炎 2例 3.3% |
肉芽腫性虫垂炎の画像所見
肉芽腫性虫垂炎4例のCT所見に関しての報告2)
本症例
右下腹部の脂肪浸潤 4/4例 ○
盲腸のarrowhead sign 4/4例 ○
腸間膜リンパ節腫大 4/4例 ○ (短径8mm)
石灰化小結石 2/4例 ×
不明瞭な壁肥厚を伴う虫垂腫大 2/4例 (直径4.3cmと2cm)
虫垂周囲の炎症性腫瘍と膿瘍 2/4例
結語 |
○偶発的に発見された肉芽腫性虫垂炎の1例を経験した。
○肉芽腫性虫垂炎は臨床症状・CT所見ともに急性虫垂炎に類似するが、
症状がやや軽度で亜急性の経過を取ること
CTにて、虫垂の腫大の程度が強いことや周囲に腫瘤形 成を伴うこと
が肉芽腫性虫垂炎を疑うポイントになりえる。
参考文献
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