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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第371回症例症例:呈示
第 371 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年10月27日]
症例4 20歳代 男性
骨化を伴った後腹膜神経鞘腫
retroperitoneal schwannoma with calcification

 

 後腹膜神経鞘腫

・後腹膜神経鞘腫は後腹膜腫瘍の1~10%を占める稀な腫瘍である。1)
・典型的症状に乏しく、偶発的に見つかるか大きく増大してから腹部膨満などを呈する。
・増大すると嚢胞変性、石灰化、出血、ヒアリン変性などの変性を呈することがある。
・病理学的には一般に細胞密度が高く柵状配列を呈するAntoni A型と、細胞密度が低く粘液腫状変性を伴うAntoni B型組織が混在する二相性パターンを示す。2)

・ Antoni B型の領域はT2WIで著明な高信号を呈し、増強効果は乏しい。一方Antoni A型の領域はT2WIでより低い信号を呈し、良好な増強効果を示す。これらの特徴は細胞密度、vascularityの違いや粘液基質の多寡を反映していると考えられている。
・ 画像所見から他の神経原性腫瘍(神経節神経腫など)との鑑別は非常に困難で、変性が強いとCTガイド下生検も難しく、外科的切除により診断が確定することも少なくない。
・ 鑑別は悪性リンパ腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、MFH、線維肉腫、神経鞘腫、神経節神経腫、傍神経節腫、血管腫、脂肪種、奇形腫、リンパ嚢腫など。明らかに脂肪の多い脂肪腫、高分化脂肪肉腫、奇形腫を除くとMRIの特異的所見は乏しい。2)

・神経鞘腫はしばしば石灰化を伴う。
・一方、骨化を伴う神経鞘腫は非常に稀で、特に画像所見として確認された報告はほとんどない。
石灰化と骨化の違いは破骨細胞や骨芽細胞があるかどうかである

 

1) M Kalayc?et al. Retroperitoneal Schwannoma: A Rare Case. Case Reports in Gastrointestinal Medicine, Volume 3, 2011.
2) K Isobe et al. Imaging of Ancient Schwannoma. American Journal of Roentgenology, Volume 183(2), 2004.


 Take Home Message

CTの石灰化領域と一致した部位にMRIで脂肪成分を認めた場合、骨化を見ている可能性があり、脂肪含有腫瘤との鑑別に注意を要する。石灰化領域と脂肪成分の位置の整合性を慎重に判断する必要がある。

 



参考文献

  • M Kalayc?et al. Retroperitoneal Schwannoma: A Rare Case. Case Reports in Gastrointestinal Medicine,
    Volume 3, 2011.
  • K Isobe et al. Imaging of Ancient Schwannoma. American Journal of Roentgenology, Volume 183(2), 2004.
  • H Kagaya et al. Giant Cauda Equina Schwannoma. SPINE, Volume 25(2), 2000.

 

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Moderator: 戸田 悠介