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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第371回症例症例:呈示
第 371 回 東京レントゲンカンファレンス[2016年10月27日]
症例8 50歳代 男性
傍神経節腫
paraganglioma

 

 画像所見

胸部CT(非造影・造影)
・上行大動脈基部から右房室間溝に広がる68mm×55mm×64mmの腫瘤を認める。
・境界明瞭で粗大な石灰化なし。

腹部骨盤部CT(非造影・造影Dynamic)
・両肺に心膜内腫瘤と同様の造影効果を示す多発結節を認める。

非造影MRI(double IR)
・T2WIでは心筋より高信号、T1 WIでも心筋より淡い高信号を示す

T1WI
画像
•右冠動脈の描出は保たれており(矢印)、腫瘤辺縁部にflow voidを疑う所見が見られる(矢頭)。

Cine-SSFP
・腫瘤は心嚢内心外病変と考えられる。

FDG-PET CT
・心嚢内腫瘍および肺腫瘍以外にFDG集積を認めない。

 

 

 鑑別診断

・傍神経節腫
・悪性リンパ腫
・キャッスルマン病
・血管肉腫
・転移性腫瘍


 経過および病理所見

・右肺病変からVATS
・神経内分泌細胞を疑う胞巣状細胞集塊を認める。細胞はChromograninおよびNSE陽性。間質はS100 陽性。

画像


最終診断:心嚢(縦隔)内傍神経節腫多発肺転移

 

 副腎外褐色細胞腫(傍神経節腫)

・クロム親和性細胞から発生
・全身の交感神経節に生じ得る
・横隔膜下:98% vs 胸部:1-2%

・傍大動脈(70%)
・Zuckerrandl小体
・頸部
縦隔
・膀胱頸部、胆嚢、子宮、前立腺、精索

RadioGraphics 2004; 24:S87–S99

 

 縦隔傍神経節腫

頻度
・縦隔腫瘍の<1%
縦隔傍神経節腫の発生部位
Aortopulmonary paraganglia由来;大血管に沿った分布
 ー≥40歳、無症状、非機能性が多い
・Aortosympathetic paraganglia由来; 後縦隔の交感神経幹に沿った分布
 ー若齢、機能性が多く有症状
AJR 2007;188:1054-1058.

 

 心嚢内傍神経節腫

頻度
・心臓腫瘍の<1%
好発部位
・心膜内:房室間溝または大血管起始部周囲(左後41.9%、左前25.6%、右前11.6%、右後10.5%)
・心臓内:左房後壁
※冠動脈が供血動脈になることが多い
Clinical Radiology 2009;64:1214-1230.
J Card Surg 2015;30:55–60.
RadioGraphics 2004; 24:S87–S99.
AJR 2007;188:1054-1058.

 

 画像所見

CT
・境界明瞭で内部不均一
・低吸収域を伴う(内部壊死)
・石灰化は稀
MRI
・T2WI:高信号
・T1WI:心筋と同等の信号変化
・造影T1WI:強い不均一な造影効果
・DWI:高いADC値(>1.304)
・Salt(出血) & pepper(flow void)
Clinical Radiology 2009;64:1214-1230.
AJR 1997;164:109-113.
J Card Surg 2015;30:55–60.
RadioGraphics 2004; 24:S87–S99.
AJR 2007;188:1054-1058.

131I-MIBGシンチグラフィ
・再発・異所性褐色細胞腫の検索
・悪性褐色細胞腫の転移巣の検索
・感度87% 特異度100%
AJR 1997;164:109-113.
18F-FDG-PET
・縦隔傍神経節腫は少数報告だが(3例)いずれも集積あり
・FDGとMIBGの比較検討(n=29)では、FDG 24例、MIBG 25例で集積を認め、それぞれ相補的な役割を示したと報告あり
Radiology 1999;212:35-41.

 

 悪性褐色細胞腫(傍神経節腫)

画像および病理所見で悪性と良性の鑑別は難しい(治療後数年を経て転移が指摘される症例もある)

必須項目
1.褐色細胞腫の診断基準で確実例または疑い例
2.副腎外腫瘍(肝臓、肺、骨、リンパ節など)の存在
副項目
1.上記2の病理組織:褐色細胞腫の所見
2.上記2の腫瘍にシンチグラフィでの取り込み
・確実例:必須項目1.2に加えて副項目1あるいは2を満たす
・疑い例:必須項目1.2を満たす場合
日本内分泌学会悪性褐色細胞腫検討委員会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業「褐色細胞腫の実態調査と診療指針作成」研究班)(平成23年10月改訂)

 

 褐色細胞腫に関連する疾患

・MEN 2A(褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、副甲状腺腺腫)
・MEN 2B(褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、多発性神経腫)
・von Hippel Lindau病
・神経線維腫症1型
・Sturge-Weber病
・結節性硬化症
・Carney’s triad:肺軟骨腫+胃GIST+傍神経節腫

 

 Take home message

・大血管基部〜房室間溝に存在する多血性腫瘤の鑑別にparagangliomaを加える
Aortopulmonary paraganglia由来病変は無症状、非機能性が多いため、画像診断の役割が重要である



参考文献

  • Hamilton BH et al. AJR 1997; 164:109-113.
  • Shulkin BL et al. Radiology 1999; 212:35-41.
  • Blake MA. RadioGraphics 2004; 24:S87−S99.
  • Balcombe J et al. AJR 2007; 188:1054-1058.
  • Hoey ET et al. Clinical Radiology 2009; 64:1214-1230.
  • 竹原 浩介ら. 内分泌甲状腺外会誌 2014; 31:175-170.
  • Wang JG et al. J Card Surg 2015; 30:55−60.

 

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Moderator: 濱本 耕平