高安動脈炎の肺動脈病変、肺胞出血 pulmonary arteries involvement in Takayasu's arteritis |
画像所見 |
胸部単純写真 | |
・右下肺野に浸潤影、スリガラス影
・左第1弓と2弓の間シルエットサイン陰性の陰影 |
|
単純CT |
・腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨下動脈に全周性の石灰化
・内腔狭窄 ・弓部、下行大動脈も同様 ・下行大動脈は一部嚢状に拡張 |
造影CT | |
▼今回 | |
右の中下葉枝が狭窄
|
|
▼4年前 | |
4年前の画像と今回を比較してみると、明らかに狭窄が強くなっている |
造影CT | |
右肺動脈中下葉枝に高度な狭窄 |
造影CT | 単純CT |
肺動脈狭窄による代償性変化として、気管支動脈の拡張を認める | ・右肺中葉を中心に浸潤影 ・中下葉にスリガラス影 ・末梢の肺動脈陰影が対側の左肺と比較すると描出されていない |
画像所見まとめ |
・腕頭動脈、両側総頸動脈、左鎖骨下動脈の石灰化と内腔の狭小化
・胸部下行大動脈の石灰化と紡錘状拡張
・右肺動脈の中葉枝・下葉枝の狭小化
・気管支動脈の拡張
・右肺中葉を中心としたスリガラス影と浸潤影
【診断】
#高安病による肺動脈狭窄
#肺胞出血
高安病 |
【概要】
・大動脈、分枝基幹動脈、冠動脈、肺動脈などの弾性血管に生ずる大血管の血管炎。
・疫学
男:女=1:8
年齢:15~35歳が中心
アジア諸国に多い。
大型血管炎の画像診断〜高安動脈炎の病態,画像診断のすべて〜.臨床画像 30(4):420-438:2014
症状(%) | |
頭部 | めまい(33.0)、頭痛(20.4)、失神(2.9)、片麻痺(2.1) |
眼 | 視力障害(4.8)、失明(1.7) |
上肢 | 血圧左右差(46.4)、脈なし(31.2)、 易疲労感(24.9)、しびれ感(12.3)、冷感(11.3) |
心臓 | 動悸(20.0)、息切れ(19.3)、胸部圧迫感(14.8) |
呼吸器 | 胸痛(7.4)、血痰(1.6) |
全身症状 | 発熱, 全身倦怠感、易疲労感、高血圧 |
【画像所見】
1.急性期
・単純CT:高吸収を呈する全周性の壁肥厚
・造影CT:後期相で造影効果を伴う壁肥厚(double ring sign)
※ double ring sign |
外側:中外膜の血管新生を伴う炎症性変化 |
内側:内膜の浮腫 |
|
2.慢性期
・狭窄性病変(反応性内膜肥厚による):弓部分枝や胸部下行大動脈や腹部大動脈に好発.
・拡張性病変(中膜平滑筋細胞の壊死、弾性繊維の破壊による):上行大動脈や大動脈弓部に好発.
「高安動脈炎」知っておきたい循環器疾患のCT・MRI(2) 画像診断 35(9) 1066-1067:2015
【病理】
・動脈外膜側から内側に進展する肉芽腫性全層性動脈炎
・外膜
—細胞浸潤を伴う、肥厚した外膜・栄養血管。
・中膜
—外側に弾性線維の虫食い像、梗塞病変。
—断片化した弾性繊維を貪食するLanghans型巨細胞
➡広範囲な線維化
・内膜
—著明な無細胞性の線維性肥厚
大型血管炎の病理〜高安動脈炎の病態,画像診断のすべて〜.臨床画像 30(4):431-438:2014
【治療】
・初期治療:ステロイド
(PSL20〜30mg/日 ➡ 維持量5-10mg/日、可能であれば離脱。)
・ステロイド抵抗例はシクロフォスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、
TNF-α阻害などが併用される。
・その他、外科的治療(バイパス術、弁形成等)
・ステロイドや免疫抑制剤で活動期の炎症をコントロールした後でも病状が少しずつ進行することが少なくない
【肺動脈病変】
・肺動脈病変を合併する頻度は70%〜80%だが、病理学的にはほぼ全例に認められる。
・症状:咳嗽、血痰、胸痛
・病態:肺動脈狭窄➡気管支動脈発達➡破綻➡血痰
Take home message |
・高安病と診断されてから約30年経過し,肺動脈病変が出現する症例を経験した。
・高安病診断後にスリガラス影,浸潤影を認めた際は、肺胞出血も鑑別にあげることが必要。
・高安病患者の画像診断については肺動脈に着目することも重要。
参考文献
|