絨毛癌 choriocarcinoma |
画像所見 |
単純CT | |
腹水貯留あり 血性を考える濃度上昇 |
後期動脈相coronal/門脈相sagittal |
子宮体部前壁左側〜子宮頭側〜背側にかけてextravasationあり |
後期動脈相/門脈相 |
内腔へ突出する多血性病変が散在 子宮体部は軽度の壁肥厚と内腔拡張の印象 |
門脈相 |
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左付属器に嚢胞性病変 |
肺野条件/HRCT |
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周囲すりガラス影(+) | ||
両肺びまん性に不整形結節が散在 |
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後期動脈相 |
単純CT | ||
両腎に微小結石あり | |||
卵巣は正常大に同定される | |||
CT所見まとめ |
来院後経過
・臨床は異所性妊娠を疑い、出血コントロール目的に緊急手術。
・腹腔内は出血+凝血塊が多量。
・子宮は手拳大。左卵管角〜卵管にかけて嚢胞状の腫瘤あり、易出血性あり。
・卵管角妊娠を疑い子宮筋層含め左卵管切除術施行。
・卵管に割を入れたがGSなし…
・子宮表面からの持続的な出血あり、子宮摘出施行。
最終術式:腹腔鏡下子宮全摘、両側卵管切除
手術時間:2時間9分
出血量:術中出血 少量
腹腔内出血 1757ml
病理所見
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マクロ所見 9.5×8pの子宮摘出検体。 腫瘍はびまん性、内向性に増殖。 |
ミクロ所見 |
左卵管と子宮体部にN/C比の高い大小不同の異形トロホブラストが増殖。 絨毛形態なし。 出血、壊死を伴う腫瘍は子宮筋層に浸潤。 |
診断 :絨毛癌(choriocarcinoma)
絨毛癌 |
・異形成を示す栄養膜細胞の異常増殖からなる悪性腫瘍。
・変性、出血、壊死を伴う充実性腫瘤を形成。
・妊娠性、非妊娠性に大別される。
(本症例で術後に聴取されたこと)
・8経妊4経産、最後の妊娠は18か月前の流産。
・9か月前より月経なし
・出血の持続は3か月前よりあった
→妊娠性絨毛癌と考えられる
絨毛癌の疫学
・妊娠性絨毛性腫瘍のうち、80%は胞状奇胎、15%が侵入奇体、5%が絨毛癌である。
・絨毛癌の先行妊娠は胞状奇胎が50%、流産が25%、正常妊娠が20%、子宮外妊娠が5%である。
・富裕な階層と比べ、社会経済的に低い層では胞状奇胎の発生頻度が10倍高い。
・O型の男性、A型の女性の組み合わせは特定のリスクがある3)。
3)Mohammadjafari R, et al. IJFS 2010;4:1-4.
絨毛癌 MRI所見
・MRIではT1WI高信号、T2WI不均一な信号強度
・近傍に拡張した栄養動脈flow voidが見られる。
・T1WIで出血を反映した高信号域の混在をみることもある1)。
・ダイナミックMRIでは絨毛組織が早期濃染2)。
1)Hricak et al, Radiology 161 : 11-16, 1986
2)Yamashita Y et al, Acta Radiol 36: 188-192, 1995
絨毛癌の予後
・メトトレキサート、アクチノマイシンD、エトポシド3剤を含む多剤併用療法が初回治療として選択され、寛解率は80%程度4)
・化学療法抵抗性病変や制御困難な出血などに対して、子宮全摘出術や転移巣の外科的切除が行われる
・転移は肺>腟>骨盤内組織、脳、肝、その他(腸管、腎臓、脾臓)
4)日本婦人科腫瘍学会 がん治療ガイドライン
絨毛癌肺転移所見について
1)typical metastasis(discrete type)
2)alveolar metastasis(miliary infiltration、snowstorm pattern)
3)embolic metastasis(腫瘍塞栓)
Libshitz HI, Baber CE, Hammond CB : Obstet Gynaecol 1977 ; 49 : 412―416
Seo et al, RadioGraphics 2001; 21:403–417
特殊な絨毛癌転移〜脾転移〜
転移巣からの出血が絨毛癌死因の 42% を占める
Satoko Irei et al, Jpn J Gastroenter ol Surg 42:1637―1641, 2009
術後経過 | |
動脈相axial/動脈相sagittal | |
・術後診察にて、腟口より1p前後12時方向に 5p大の腫瘤あり、易出血性、壊死あり→腟転移 ・ファーストラインの化学療法施行 |
術後化学療法後3か月のfollow up CT
・不整形結節はほぼ消失
Take home points |
・絨毛癌では先行妊娠から長期を経て発症するものが少なくない。
・性成熟期女性の腹腔内出血を認めた場合には、絨毛癌を鑑別に必ず入れるべきである。
・性成熟期女性の多血性転移性腫瘍(特に肺、脳)をみたら、絨毛癌を原発巣として疑う必要がある。
参考文献
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