症例１　80歳代　男性

小腸憩室炎穿通による腹膜炎 peritonitis due to penetration of small intestine diverticulitis

 

術中写真

	小腸腸間膜内に大小多数の憩室あり。 腹腔内に汚染された腹水貯留なし。穿孔の所見なし。

 

診 断：「多発小腸仮性憩室」「空腸憩室炎・穿通」

所見の確認

➀「多発小腸仮性憩室」

◎小腸仮性憩室について◎

・全消化管憩室の1.3〜4.6％（剖検例より）^1）
・数mm大〜3cm以上（26cmの報告もあり）^2）
・60〜70歳代の男性に多い^3）
・近位空腸に多く、しばしば多発する^4）
・後天的な腸管内圧の上昇が原因とされる^5）
・通常はほぼ症状なし^6）
・出血、炎症、穿孔/穿通を起こす可能性がある^7）

造影CT 冠状断
腸管外に 「便塊？」	小腸に大きな「仮性憩室」が多発 内部に「便塊貯留」

 

➁ 「空腸憩室炎・穿通」

◎小腸仮性憩室穿通について◎

・小腸仮性憩室は腸間膜付着部に発生する頻度が高く、炎症に伴い小腸間膜に穿通し得る^8）
・穿通では通常は汎発性腹膜炎とならない^8）
・小腸内腔から仮性憩室に連続する管腔構造を伴う場合がある^2）

造影CT 軸位断
左側腹部に「膿瘍？」

病理検体

 

病態の推察・まとめ

・多発小腸憩室、内部に便塊貯留
・空腸憩室炎
・小腸間膜への穿通・膿瘍形成
・左側腹部の腹膜への限局的な炎症波及

 

Take Home Message

・小腸に大きな仮性憩室が多発することがある
・仮性憩室は壁が薄いため、貯留した便塊が腸管外に見える場合がある

 

 

---

参考文献

1. Maglinte DD, Chernish SM, De Weese R, et al. Acquired jejunoileal diverticular disease. A subject review. Radiology. 1986;158:577-580.
2. Takehito E, Tsuyoshi K, Ichiro H, et al. A case of large diverticulum of the distal jejunum. J Jap Surg Assoc. 2004;65:1850-1854.
3. Lempinen M, Salmela K, Kemppainen E, et al. Jejunal diverticulosis: a potentially dangerous entity. Scand J Gastroenterol. 2004;39:905-909.
4. Longo WE, Vernava AM, et al. Clinical implications of jejunoileal diverticular disease. Dis Colon Rectum. 1992;35:381-388.
5. Edwards HC. Diverticulosis of the small intestine. Ann Surg. 1936;103:230-254.
6. Rodriguez HE, Ziaudin MF, Quiros ED, et al. Jejunal diverticulosis and gastrointestinal bleeding. J C Gastrenterol. 2001;33:412-414.
7. Wilcox RD, Shatney CH. Surgical implications of jejunal diverticula. South Med J. 1988;81:1386-1391.
8. ?野 克樹, 大西 直, 稲留 遼一, 他. 小腸多発憩室の穿通による腸間膜膿瘍の１例. 日臨外会誌. 2011；72：2153-2157.

 

◀ 症例提示へ戻る 画像をまとめて見る…PDF

Moderator：　有田　祐起、松本　秀樹、相馬　崇宏、伊東　良晃、喜多　和代、小黒　草太、鈴木　和代、徳山　丞、村田　有也、樋口　順也

第381回 症例		症例 一覧		TRCトップページ