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第 383 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年4月26日]
症例8 60歳代 男性:臨床診断肺癌。病期診断の為に施行した頭部MRI で左眼窩内病変が指摘された。
涙腺多形腺腫
pleomorphic adenoma of the lacrimal gland


 画像所見のまとめ

・左涙腺の背側に境界明瞭な筋円錐外腫瘤を認め、軽度の左眼球突出を認める。
・左涙腺は腹側に圧排されるような形状で、涙腺から発生しているか否かが微妙な場所にある。
・CTでは脳とほぼ等吸収で内部は均一で、全体的に造影される。
・MRIでは辺縁にT2WI低信号の被膜状構造があり、内部はT2WI高信号。DWIで高信号で、ADCは脳より軽度高い。

 

 涙腺多形腺腫

・涙腺上皮性腫瘍のうち頻度が最多で50%程度。次が腺様嚢胞癌。
・眼窩内腫瘍の4-9%程度を占める。     J Surg Case Rep. 2013 Oct; 2013(10): rjt089. ・40歳-50歳代以降が好発年齢。
・臨床症状として無痛性が多く、疼痛は悪性病変を疑わせる。
・組織学的には、線維性のpseudocapsuleを有する。
J Korean Ophthalmol Soc. 2014 Mar;55(3):422-425.

画像所見
・唾液腺多形腺腫と同様に画像所見は多岐に及ぶが、境界明瞭なT2WI不均一高信号腫瘤として認められる事が多い。
 造影効果は均一である事が多い。境界不明瞭は悪性腫瘍を疑わせる
・緩徐増大を反映し、骨の非破壊性の圧排変形を伴う事がある。
唾液腺多形腺腫ではT2WI低信号の被膜状構造が特徴的とされるが、本例もそれに合致。局在もよく見られる部位のようである。
Graefe’s Arch Clin Exp Ophthalmol (2003) 241:907–913

涙腺の正常サイズ
・涙腺は、加齢により縮小する事が知られている。
・正常サイズについてはいくつかの報告があり、Axial像計測で
  -長さ16.1±2.0mm、幅4.1±0.7mm    J Clin Diagn Res. 2016 Feb; 10(2): TC06–TC08.  -長さ14.6mm(10.9mm-18.3mm)、幅4.1mm IJSRP, Volume 6, Issue 1, January 2016  -20 × 12 × 5 mm                    AJR 2013; 201:W371–W381 ・Coronal像計測で厚みが
  -4.8 ± 1.2 mm[AJR 1998;170:1661-1666]
  -20歳代女性で5.7±1.2mm・男性4.9±0.8mm
  -70歳代女性4.3±0.8mm・男性4.6±1.0mm      Acta Radiologica, 37:5, 714-719

 

 結語

・涙腺多形腺腫の1例
・涙腺腫瘍は涙腺から発生しているか画像上わかりづらい事があるが、
 涙腺と少しでも接しているようでかつ明確な発生部位が不明な場合、涙腺由来の可能性は考慮するべきと考えた。

 

 


参考文献

  • Orbital neoplasms in adults: clinical, radiologic, and pathologic review. Tailor TD, et al. Radiographics. 2013 Oct;33(6):1739-58.
  • The radiological spectrum of orbital pathologies that involve the lacrimal gland and the lacrimal fossa. Jung WS, et al. Korean J Radiol. 2007 Jul-Aug;8(4):336-42.
  • Magnetic resonance imaging of unilateral lacrimal gland lesions. Gündüz K, et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2003 Nov;241(11):907-13.