シュワッハマン ダイヤモンド症候群 Shwachman Diamond syndrome |
【主訴】 発熱 倦怠感 息切れ
【現病歴】20日前より38℃台の発熱、倦怠感、息切れ 出現。
数日前に近医受診。汎血球減少を認め、当院紹介受診・入院。
【身体所見】体温38 ℃ 意識清明、眼瞼結膜貧血 その他異常なし
【血液 生化学所見】
WBC 2500/μL Neut 2% Lym 91%
RBC 166 万/μL Hb 6.2g/dL PLT 7.2×104/μL Amy 24 U/L
末梢血に芽球は認めず その他、異常なし (正常値60-200)
【既往歴】小児期に肝障害(詳細不明) 【家族歴】母 肺癌
鑑別診断 |
[膵脂肪化]
遺伝子病
・嚢胞性線維症/cystic fibrosis
慢性気道感染、膵外分泌異常、イレウス、肝硬変
・Shwachman-Diamond症候群
膵外分泌異常、遺伝性骨髄不全、骨格異常、肝機能障害
・Pearson病/Pearson marrow pancreas syndrome
膵外分泌異常、貧血、糖尿病、肝機能障害、尿細管障害、代謝性アシドーシス、高乳酸血症など
ほとんどが生後4週以内に気付かれる貧血で発症
・Johanson-Blizzard症候群
膵外分泌異常、外胚葉由来の小奇形(鼻翼、歯牙、頭皮など)
複合要因
加齢、肥満、糖尿病、慢性膵炎、肝疾患、栄養障害、ステロイド、膵管閉塞 など
[膵無形性 ・ 膵低形成]
・嚢胞性線維症/cystic fibrosis
慢性気道感染、膵外分泌異常、イレウス、肝硬変 → 気道病変が存在しない点が非典型的
・Shwachman-Diamond症候群
膵外分泌異常、遺伝性骨髄不全、骨格異常、肝機能障害 → 矛盾しない
・Pearson病/Pearson marrow pancreas syndrome
膵外分泌異常、貧血、糖尿病、肝機能障害、尿細管障害、代謝性アシドーシス、高乳酸血症など
ほとんどが生後4週以内に気付かれる貧血で発症 → 鑑別は困難とされるが、新生児期症状なし、多彩症状出現なし
・Johanson-Blizzard症候群
膵外分泌異常、外胚葉由来の小奇形(鼻翼、歯牙、頭皮など) → 外表奇形は早期に気付かれるため鑑別可能
Shwachman-Diamond症候群 |
名称・疫学
・1964年にShwachmanらによって報告1)
共著者Diamond、同年に別途Bodian2)が類似報告 → Shwachman-Bodian-Diamond症候群とも称される
・常染色体劣性遺伝 15-20万人に1人との報告
遺伝子(Shwachman-Bodian-Diamond syndrome遺伝子)
・7q11のSBDS遺伝子が責任との報告3) (90%の患者で変異)
→250個のアミノ酸からなるタンパク質をコード
リボソーム生成や紡錘糸の安定性に関与すると考えられている
iPS細胞を用いた研究でSBDS変異が膵外分泌機能喪失、造血細胞分化障害、アポトーシス亢進にかかわることが証明された
・2017年にはSBDSと類似の症状を呈し、15q25のEFL1遺伝子(Elongation Factor-like 1遺伝子)に変異がある疾患の報告あり4)
・遺伝子変異と表現型、重症度の相関は認められていない
症状
・血液学的異常
好中球減少 1500μL未満(88-100%) 1/3は慢性的、2/3は間欠的
貧血(42-84%)
血小板減少 15万/μL以下(24-88%)
汎血球減少(10-60%)
MDSやAMLのリスク(20年で19%、30年で36%との推察)
・腹部臓器異常
膵外分泌機能異常
膵腺房細胞脂肪置換 ⇔ 膵島細胞は正常
消化不良、脂肪下痢便、脂溶性ビタミン低下
肝腫大(15%)、肝機能異常(50-75%)
・骨格異常
骨幹端性軟骨異形成症(50%)、胸郭異常、低身長
治療
・対症療法
造血機能異常:輸血
好中球減少・重症感染症:G-CSF投与
膵外分泌機能異常:膵酵素補充、脂溶性ビタミン投与
・根治的治療
重度の造血機能異常、MDS/AML転化:造血幹細胞移植
結語 |
・膵実質の存在が不明瞭な場合には
膵Lipomatosis
膵無形性・低形成
が鑑別に挙がり、背景状態から鑑別が絞られる
参考文献
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