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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第383回症例症例:呈示
第 383 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年4月26日]
症例2 20歳代 男性
シュワッハマン ダイヤモンド症候群
Shwachman Diamond syndrome

 

【主訴】 発熱 倦怠感 息切れ
【現病歴】20日前より38℃台の発熱、倦怠感、息切れ 出現。 数日前に近医受診。汎血球減少を認め、当院紹介受診・入院。
【身体所見】体温38 ℃ 意識清明、眼瞼結膜貧血 その他異常なし 

【血液 生化学所見】
 WBC 2500/μL  Neut 2% Lym 91%  RBC 166 万/μL Hb 6.2g/dL PLT 7.2×104/μL Amy 24 U/L
 末梢血に芽球は認めず  その他、異常なし                              (正常値60-200)

【既往歴】小児期に肝障害(詳細不明)  【家族歴】母 肺癌

 

 鑑別診断

[膵脂肪化]

遺伝子病
・嚢胞性線維症/cystic fibrosis
   慢性気道感染、膵外分泌異常、イレウス、肝硬変
・Shwachman-Diamond症候群
   膵外分泌異常遺伝性骨髄不全、骨格異常、肝機能障害
・Pearson病/Pearson marrow pancreas syndrome
   膵外分泌異常貧血、糖尿病、肝機能障害、尿細管障害、代謝性アシドーシス、高乳酸血症など
   ほとんどが生後4週以内に気付かれる貧血で発症
・Johanson-Blizzard症候群
   膵外分泌異常、外胚葉由来の小奇形(鼻翼、歯牙、頭皮など)

複合要因
 加齢、肥満、糖尿病、慢性膵炎、肝疾患、栄養障害、ステロイド、膵管閉塞 など

[膵無形性 ・ 膵低形成]

・嚢胞性線維症/cystic fibrosis
   慢性気道感染、膵外分泌異常、イレウス、肝硬変 → 気道病変が存在しない点が非典型的
・Shwachman-Diamond症候群
   膵外分泌異常、遺伝性骨髄不全、骨格異常、肝機能障害 → 矛盾しない
・Pearson病/Pearson marrow pancreas syndrome
   膵外分泌異常貧血、糖尿病、肝機能障害、尿細管障害、代謝性アシドーシス、高乳酸血症など
   ほとんどが生後4週以内に気付かれる貧血で発症 → 鑑別は困難とされるが、新生児期症状なし、多彩症状出現なし
・Johanson-Blizzard症候群
   膵外分泌異常、外胚葉由来の小奇形(鼻翼、歯牙、頭皮など) → 外表奇形は早期に気付かれるため鑑別可能


 Shwachman-Diamond症候群

名称・疫学
・1964年にShwachmanらによって報告1)
  共著者Diamond、同年に別途Bodian2)が類似報告  → Shwachman-Bodian-Diamond症候群とも称される
・常染色体劣性遺伝 15-20万人に1人との報告

遺伝子(Shwachman-Bodian-Diamond syndrome遺伝子)
・7q11のSBDS遺伝子が責任との報告3) (90%の患者で変異)
  →250個のアミノ酸からなるタンパク質をコード
  リボソーム生成や紡錘糸の安定性に関与すると考えられている
  iPS細胞を用いた研究でSBDS変異が膵外分泌機能喪失、造血細胞分化障害、アポトーシス亢進にかかわることが証明された
・2017年にはSBDSと類似の症状を呈し、15q25のEFL1遺伝子(Elongation Factor-like 1遺伝子)に変異がある疾患の報告あり4)
・遺伝子変異と表現型、重症度の相関は認められていない

症状
・血液学的異常
  好中球減少 1500μL未満(88-100%)  1/3は慢性的、2/3は間欠的
  貧血(42-84%)
  血小板減少 15万/μL以下(24-88%)
  汎血球減少(10-60%)
  MDSやAMLのリスク(20年で19%、30年で36%との推察)

・腹部臓器異常
  膵外分泌機能異常
   膵腺房細胞脂肪置換 ⇔ 膵島細胞は正常
   消化不良、脂肪下痢便、脂溶性ビタミン低下
  肝腫大(15%)、肝機能異常(50-75%)

・骨格異常
 骨幹端性軟骨異形成症(50%)、胸郭異常、低身長

治療
・対症療法
  造血機能異常:輸血
  好中球減少・重症感染症:G-CSF投与
  膵外分泌機能異常:膵酵素補充、脂溶性ビタミン投与

・根治的治療
  重度の造血機能異常、MDS/AML転化:造血幹細胞移植

 

 

 結語

・膵実質の存在が不明瞭な場合には
  膵Lipomatosis
  膵無形性・低形成
 が鑑別に挙がり、背景状態から鑑別が絞られる

 


参考文献

  1. Shwachman H, Diamond LK, et al. (1964). "The syndrome of pancreatic insufficiency and bone marrow dysfunction". J Pediatr. 65: 645−63.
  2. Bodian M, et al. (1964). "Congenital hypoplasia of the exocrine pancreas". Acta Paediatr. 53: 282−93
  3. Boocock GR, et al. (2003). “Mutations in SBDS are associated with Shwachman−Diamond syndrome”. Nat Genet. 33: 97−101.
  4. Stepensky P, et al. (2017). “Mutations in EFL1, an SBDS partner, are associated with infantile pancytopenia, exocrine pancreatic insufficiency and skeletal anomalies in a Shwachman-Diamond like syndrome”. J Med Genet. 54: 558-566
  5. 金兼弘和ら. “Shwachman-Diamond症候群”別冊日本臨床 2011; 16: 65-68
  6. 渡邉健一郎ら. “Shwachman-Diamond症候群”別冊日本臨床 2014; 30: 681-684 .
  7. Shaaban et al. Radiographics 2016; 36: 710-734
  8. Levin TL et al. Pediatric Radiology 2015; 45: 1066−1071
  9. Burroughs et al. Hematology/Oncology Clinics of North America 2009; 23: 233-248

 

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Moderator: 宮川 天志