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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第383回症例症例:呈示
第 383 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年4月26日]
症例3 50歳代 女性
外陰部血管筋線維芽細胞腫
angiomyofibroblastoma of the vulva

 

 画像所見

経膣超音波  
img ・長径3cmほどの低エコーの外陰部皮下腫瘤
MRI
T2強調横断像(Ax T2WI)/T2強調冠状断像(Cor T2WI)
img
拡散強調像(b=1000 s/mm2)(DWI)/ ADC計算画像(ADC map)
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脂肪抑制T1強調冠状断像(Cor fsT1WI, DIXON)/造影脂肪抑制T1強調冠状断像(Cor CE-fsT1WI, DIXON)
img

 

画像所見のまとめ
・中年女性の外陰部腫瘤、長径2.5cm
・経膣超音波:低エコー
・MRI
  T1WI:骨格筋に比して均一な低信号、一部高信号 
  T2WI:比較的高信号、不均一な軽度低信号域が混在
  DWI:ほぼ低〜無信号(ADC: 1.34×10-3mm2/s)
  造影後:強い増強効果、造影後は内部不均一
  点状の脂肪成分


 病理診断

・所見 検体は25x17x10mm大の腫瘍切除材料。
組織学的に、大きさの揃った円形核を持つ腫瘍細胞が、一見血管腔様のスリット状、洞様構造を伴って、或いは充実性に増殖している。背景には小血管が多数介在する。肥満細胞が散見される。悪性とするような核異型はなく、核分裂像にも乏しい。
免疫染色:desmin(+), CD31(-), 介在する小血管内皮のみ陽性), CD34(+), ER(+), PR(+), SMA(-), calponin(-), caldesmon(-), HMB45(-), vimentin(+), Mib-1 index <1%

→ Angiomyofibroblastoma of the vulva, excision.

 

 

 

 血管筋線維芽細胞腫(angiomyofibroblastoma: AMFB)

一般的事項:
・中年女性の生殖器領域に生じる稀な良性の間葉系腫瘍で、 臨床的にはバルトリン腺嚢胞を疑われることが多い1)
・境界明瞭、大きさは通常 5cm 以下2)、0.5-12cmの範囲の報告1, 3)
・発生部位:主に外陰部、大陰唇、膣、陰核周囲、会陰、他に尿道4)、膀胱周囲5)や、男性例では陰嚢、鼠径など
・症状:無症状が多いが、尿道の症例では排尿障害4)
・治療:浸潤傾向や再発はなく、基本的には局所切除のみで治癒1)


病理:
・病理組織:類円形の間質細胞と浮腫性結合組織中に豊富な小血管があり、
 同一腫瘍内でも部位により細胞密度が異なるが、比較的細胞密度が高いことが特徴6)
・免疫染色:vimentin、desmin、ER(エストロゲンレセプター)/PR(プロゲステロンレセプター)が陽性、actin、CD34が陰性7)

 

画像所見:
・境界明瞭な腫瘤
・T2WIでは浮腫性線維性背景を反映して高信号、細胞密度の高い部位では低信号で、不均一さを含む信号変化
・造影後は豊富な血管増生のため、均一に強い増強効果2, 8)
組織学的に種々の程度の成熟脂肪組織が認められることがあり
 脂肪が豊富に存在する場合には lipomatous variant of AMFB と呼ばれる9)
  −MRIのchemical shift imagingで脂肪の存在を証明することができれば、
   侵襲性血管粘液腫(AAM)との鑑別の一助となる可能性がある
  −AAMでは脂肪成分についての記載は乏しいが、線状の 脂肪組織の内在を画像的に指摘している症例報告10)はある

 

 鑑別疾患7)

・侵襲性血管粘液腫 aggressive angiomyxoma (AAM)術後再発率が高く、十分な切除範囲を考慮する必要あり
・細胞性血管線維腫 cellular angiofibroma (CAF)AMFBと同様に、単純切除で再発は少ないとされる

AMFB

AAM

CAF

大きさ

<5cm

多くは>10cm

<3cm

腫瘍境界

明瞭

比較的明瞭、時に不整

明瞭

CT

骨格筋より低吸収

骨格筋より低吸収

MRI

T2WIで比較的均一な高信号

T2WIで高信号で渦巻き、
層状の低信号

T2WIで低信号
(豊富な膠原線維のため)

造影

均一に強く造影される

渦巻き状(swirling)、
層状構造が造影される

強く造影される

 

 Take Home Points

・外陰部の良性腫瘍の一つに血管筋線維芽細胞腫(AMFB)があり、浸潤傾向や再発はないが、
 しばしば局所再発が生じる侵襲性血管粘液腫 (AAM)と鑑別が問題となる
・血管筋線維芽細胞腫(AMFB)には成熟した 脂肪組織を含むものがあり、
 MRIで脂肪成分が証明できれば、鑑別の一助となる可能性がある

 

 


参考文献

  1. Fletcher CD et al, Am J Surg Pathol 16: 373-382, 1992.
  2. Nagai K et al, Int J Clin Oncol 15: 201-205, 2010.
  3. Shoji T et al, Mol Clin Oncol 7: 407-411, 2017.
  4. Kitamura H et al, Int J Urol 16: 268-270, 1999.
  5. Lim KJ et al, Korean J Radiol 9: 382-385, 2008.
  6. Mortele KJ et al. J Comput Assist Tomogr 23:687-9,1999 .
  7. Enzinger and Weiss's Soft Tissue Tumors: Expert Consult.
  8. Junzu G et al, Jpn J Radiol 29:152–155, 2011.
  9. Cao D et al, Int J Gynecol Pathol 24:196-200, 2005.
  10. Brunelle S et al, Case Rep Oncol 6: 373-381, 2013.

 

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Moderator: 山田 晴耕、鈴木 藍子