外陰部血管筋線維芽細胞腫 angiomyofibroblastoma of the vulva |
画像所見 |
経膣超音波 | |
・長径3cmほどの低エコーの外陰部皮下腫瘤 |
MRI |
T2強調横断像(Ax T2WI)/T2強調冠状断像(Cor T2WI) |
拡散強調像(b=1000 s/mm2)(DWI)/ ADC計算画像(ADC map) |
脂肪抑制T1強調冠状断像(Cor fsT1WI, DIXON)/造影脂肪抑制T1強調冠状断像(Cor CE-fsT1WI, DIXON) |
画像所見のまとめ
・中年女性の外陰部腫瘤、長径2.5cm
・経膣超音波:低エコー
・MRI
T1WI:骨格筋に比して均一な低信号、一部高信号
T2WI:比較的高信号、不均一な軽度低信号域が混在
DWI:ほぼ低〜無信号(ADC: 1.34×10-3mm2/s)
造影後:強い増強効果、造影後は内部不均一
点状の脂肪成分
病理診断 |
・所見 検体は25x17x10mm大の腫瘍切除材料。
組織学的に、大きさの揃った円形核を持つ腫瘍細胞が、一見血管腔様のスリット状、洞様構造を伴って、或いは充実性に増殖している。背景には小血管が多数介在する。肥満細胞が散見される。悪性とするような核異型はなく、核分裂像にも乏しい。
免疫染色:desmin(+), CD31(-), 介在する小血管内皮のみ陽性), CD34(+), ER(+), PR(+), SMA(-), calponin(-), caldesmon(-), HMB45(-), vimentin(+), Mib-1 index <1%
→ Angiomyofibroblastoma of the vulva, excision.
血管筋線維芽細胞腫(angiomyofibroblastoma: AMFB) |
一般的事項:
・中年女性の生殖器領域に生じる稀な良性の間葉系腫瘍で、臨床的にはバルトリン腺嚢胞を疑われることが多い1)
・境界明瞭、大きさは通常 5cm 以下2)、0.5-12cmの範囲の報告1, 3)
・発生部位:主に外陰部、大陰唇、膣、陰核周囲、会陰、他に尿道4)、膀胱周囲5)や、男性例では陰嚢、鼠径など
・症状:無症状が多いが、尿道の症例では排尿障害4)
・治療:浸潤傾向や再発はなく、基本的には局所切除のみで治癒1)
病理:
・病理組織:類円形の間質細胞と浮腫性結合組織中に豊富な小血管があり、
同一腫瘍内でも部位により細胞密度が異なるが、比較的細胞密度が高いことが特徴6)
・免疫染色:vimentin、desmin、ER(エストロゲンレセプター)/PR(プロゲステロンレセプター)が陽性、actin、CD34が陰性7)
画像所見:
・境界明瞭な腫瘤
・T2WIでは浮腫性線維性背景を反映して高信号、細胞密度の高い部位では低信号で、不均一さを含む信号変化
・造影後は豊富な血管増生のため、均一に強い増強効果2, 8)
・組織学的に種々の程度の成熟脂肪組織が認められることがあり、
脂肪が豊富に存在する場合には lipomatous variant of AMFB と呼ばれる9)
−MRIのchemical shift imagingで脂肪の存在を証明することができれば、
侵襲性血管粘液腫(AAM)との鑑別の一助となる可能性がある
−AAMでは脂肪成分についての記載は乏しいが、線状の脂肪組織の内在を画像的に指摘している症例報告10)はある
鑑別疾患7) |
・侵襲性血管粘液腫 aggressive angiomyxoma (AAM)術後再発率が高く、十分な切除範囲を考慮する必要あり
・細胞性血管線維腫 cellular angiofibroma (CAF)AMFBと同様に、単純切除で再発は少ないとされる
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AMFB |
AAM |
CAF |
大きさ |
<5cm |
多くは>10cm |
<3cm |
腫瘍境界 |
明瞭 |
比較的明瞭、時に不整 |
明瞭 |
CT |
骨格筋より低吸収 |
骨格筋より低吸収 |
− |
MRI |
T2WIで比較的均一な高信号 |
T2WIで高信号で渦巻き、 |
T2WIで低信号 |
造影 |
均一に強く造影される |
渦巻き状(swirling)、 |
強く造影される |
Take Home Points |
・外陰部の良性腫瘍の一つに血管筋線維芽細胞腫(AMFB)があり、浸潤傾向や再発はないが、
しばしば局所再発が生じる侵襲性血管粘液腫(AAM)と鑑別が問題となる
・血管筋線維芽細胞腫(AMFB)には成熟した脂肪組織を含むものがあり、
MRIで脂肪成分が証明できれば、鑑別の一助となる可能性がある
参考文献
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