第 391 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年4月25日]
症例1 80歳代 女性:意識障害 |
浸透圧性脱髄症候群 osmotic demyelination syndrome |
浸透圧性脱髄症候群 |
・血漿浸透圧一般の急激な変動による髄鞘の障害
・橋に病変が見られるものを橋中心性髄鞘崩壊症、橋以外に病変が見られるものを橋外髄鞘崩壊症というが、
最近ではこれらをまとめて浸透圧脱髄症候群ということが多い
・多くは慢性アルコール中毒、低栄養状態、低Na血症の急速な補正に関連して発症するが、
高Na血症、肝疾患、腎不全、糖尿病、移植後にも伴うことがある
・症状:
四肢麻痺、仮性球麻痺、意識障害、痙攣、閉じ込め症候群など
通常は急激に発症.無症状の場合もあり
・治療:
血漿交換、ステロイド療法、免疫グロブリン療法など
ただし確立されたものはなく予防が重要
・予後:
40%では後遺症なし
25%以上の患者に重度の神経学的後遺症
致死率は6%
「MRI所見」
《橋》
・急性期:中心部に軽度の腫脹を伴う境界やや不明瞭な病変、辺縁部(縦走線維)は保たれる
T1WIで低信号、T2WIで高信号
拡散強調像でも高信号を示し、早期診断に有用時にSWIで病変内部に微小出血
・慢性期:背側を底辺とする三角形状のT2延長域
橋小脳路を介した2次変性により中小脳脚にT2延長域が見られることもある
《橋以外》
・髄鞘が豊富な被殻から外包、視床などに左右対称性の異常信号(信号強度はCPMと同様)を生じる
・その他、内包、大脳皮質下白質(特に脳回の山側)、中小脳脚などにも生じる
・中小脳脚の病変は橋の病変の2次変性としても生じうるが、橋に病変のない症例でも認められる
Take home message |
・浸透圧性脱髄症候群では橋のみならず様々な領域に病変を生じる
・その好発部位を熟知しておくことで、限られた臨床情報のなかでも正確な診断にたどり着くことができると考えられる
参考文献