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第 391 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年4月25日]

症例3 40歳代 女性:左下腹部痛
子宮腺筋症から発生した類内膜癌
endometrioid carcinoma arising from adenomyosis

 

 子宮腺筋症の悪性化

定義 Colman(1959),Kumar(1958)らによる
・子宮内膜に腫瘍を認めないこと
・腫瘍が子宮腺筋症領域から
・発生し、他の部位からの浸潤・転移ではないこと
・腺筋症と診断しうる子宮内膜間質細胞が存在すること
・良性から悪性への移行像があること

・子宮体癌の16〜34%に子宮腺筋症が併存
・一方腺筋症の悪性化(腺筋症内に発生した
 子宮体癌)の報告は2014年までに英文で44例程度と稀
・内膜症性嚢胞の癌化は約0.7%
種市 明代ら.子宮腺筋症から発生した子宮体がんの一例 日エンドメトリオーシス会誌 2014;3:244-246・子宮腺筋症の悪性化は子宮体癌(手術例)における0.7 %(4/564)
Koshiyama et al. Adenocarcinomas arising from uterine adenomyosis: a report of four cases.Int J Gynecol Pathol. 2002;21:239-45.・腺筋症内に発生した病変が内膜側に穿破した場合は定義を満たさないため、実際は報告より高頻度の可能性あり

組織型
・上皮性腫瘍・・・類内膜腺癌、明細胞腺癌、漿液性腺癌、内頸部型境界悪性粘液腫瘍
・非上皮性腫瘍・・・内膜間質肉腫、腺肉腫

頻度的には類内膜腺癌が最多

臨床所見
・病変が筋層に留まるため、臨床症状に乏しく、内膜細胞診や組織診での陽性率も低いため、指摘が遅れる場合がある
・腫瘍マーカーは上昇していることも陰性のこともある

画像所見
・境界明瞭または不明瞭
・T1WIにて低信号(出血を反映して高信号域を含む場合もあり)、
 T2WIにて軽度高信号、早期〜後期相にて弱い造影増強効果/不均一に濃染、拡散強調像にて拡散低下を示す
・→進行例では画像上、背景の腺筋症の同定が困難な場合がある
福永 健ら.子宮腺筋症から発生したと考えられた子宮体部類内膜腺癌の2例 臨床放射線 2016;61:367-372

 

 Take home message

・子宮腺筋症から癌が発生しうることを念頭におき読影する
・子宮腺筋症内に、増大する拡散低下領域や筋層と比較し造影効果の弱い腫瘤性病変が出現した場合に本症を疑うきっかけとなる

 


参考文献

  • 福永 健ら.子宮腺筋症から発生したと考えられた子宮体部類内膜腺癌の2例 臨床放射線 2016;61:367-372
  • 種市 明代ら.子宮腺筋症から発生した子宮体がんの一例 日エンドメトリオーシス会誌 2014;3:244-246
  • Koshiyama M, et al. Adenocarcinomas arising from uterine adenomyosis: a report of four cases. Int J Gynecol Pathol. 2002;21:239-45.