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第 391 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年4月25日]

症例6 60歳代 女性:労作時呼吸苦
慢性肺動脈血栓塞栓症
chronic pulmonary thromboembolism

 

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)

定義
器質化した血栓により肺動脈が閉塞し、肺高血圧症を合併し,臨床症状として労作時の息切れなどを強く認めるもの。
・異常が6ヶ月以上にわたって固定
・平均肺動脈血圧が25mmHg以上
日本肺高血圧・肺循環学会,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診療ガイドライン,p12検査
・血液検査
・心電図、心エコー
・右心カテーテル、肺血管造影
・胸部Xp
・胸部単純・造影CT
・肺換気・血流シンチグラフィー

・症状は労作時呼吸困難など非特異的→まずは胸部単純CTが施行されることが多い

胸部単純CT所見
・主肺動脈の拡張
・右心系の拡大
・区域肺動脈枝の狭小や途絶、ばらつき
・モザイク灌流(77-100%
・末梢陰影(72-87%
・気管支の円筒状拡張
・心膜肥厚や心嚢液貯留
・リンパ節腫大
Claudia Grosse, RadioGlaphics, 2010;1753-1777
Bergin CJ, AJR, 1996;166:1371-1377
モザイク灌流
・不均一な血流による境界明瞭な高吸収域、低吸収域の混在。
・低吸収域は血管閉塞や非閉塞血管の障害による低灌流が原因となる。
・高吸収域は血流の再分布による。
Eva Castaner, RadioGraphics, 2009;29:31-53
King MA, AJR, 1998;170:955-960
末梢陰影
・過去の肺梗塞による瘢痕が索状や線状、楔状、結節、空洞陰影として低吸収の領域に認められることがある。
・一般的には下葉に見られ,しばしば胸膜の肥厚を伴う。
Eva Castaner, RadioGraphics, 2009;29:31-53
King MA, AJR, 1998;170:955-960
治療
・抗凝固療法
・肺血管拡張薬
・肺動脈内膜摘除術
・バルーン肺動脈拡張術
日本肺高血圧・肺循環学会,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診療ガイドライン,p33-35

本症例では抗凝固薬、肺血管拡張薬の内服を開始し、症状改善傾向だった。

 

 結語

・CTEPHは治療可能な疾患であり、確実に診断する必要がある。
・主訴は労作時呼吸困難など非特異的であるため、
 まず施行されると思われる胸部単純CTでモザイク灌流や血管異常が認められた場合には鑑別にあげることが重要と考えられた。

 


参考文献

  • Claudia Grosse, RadioGraphics, 2010:1753-1777
  • Bergin CJ, AJR, 1996;166:1371-1377
  • Eva Castaner, RadioGraphics, 2009;29:31-53
  • King MA, AJR, 1998;170:955-960
  • 日本肺高血圧・肺循環学会,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診療ガイドライン