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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第391回症例 症例:呈示
第 391 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年4月25日]
症例2 60歳代 男性
結節性多発動脈炎に伴う肝出血
hepatic hemorrhage associated with polyarteritis nodosa

 

 画像所見
         
単純   動脈相(MIP再構成5mm)   平衡相
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単純では肝右葉実質内に広がる高吸収域がみられる。(
動脈相ではA5近位部に仮性動脈瘤を認め,平衡相にかけて広がっている。(
A6にも造影剤の血管外漏出を認める。(
     
動脈相 冠状断像   動脈相 3D再構成
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動脈相ではA5近位部に仮性動脈瘤を認め、血腫内に造影剤が広がっている。(

 

動脈相ではA5近位部に仮性動脈瘤を認め、同部位から血管外漏出を認める。(
左腎動脈の腎門部にも小さな動脈瘤を認める。(

腹部Angio
A5およびA6から造影剤の血管外漏出を認める。
造影CTと同様に離れた部位に出血を認める。

T1WI:辺縁部に高信号、内部に低信号血腫の所見
T2WI:淡い高信号
DWI / ADC-map:不均一な拡散制限

EOB-MRI(FST1WI):明らかな腫瘤や異常濃染域は指摘できない。

 

【画像所見まとめ】
[CT]肝後区域に広がる血腫を認める。A5に仮性動脈瘤を認め、血管外漏出を伴う。
    A6にも仮性動脈瘤を認める。左腎動脈に動脈瘤を疑う。
[血管造影]A5, A6の末梢の離れた部位にそれぞれ血管外漏出を認める。
[MRI]血腫を認める他、明らかな腫瘍は指摘できない。

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Spontaneous hepatic hemorrhage
特発性肝出血


 特発性肝出血の鑑別疾患

Diagnosis Frequency
Malignant HCC 3-26%, commonest cause
Angiosarcoma 25%
Hemangioendothelioma Very rare
Metastases Rare
Benign Adenoma Relatively common
FNH Rare
Hemangioma Uncommon
Nodular Regenerative Hyperplasia Very rare
Cystadenoma Very rare
Angiomyelolipoma Very rare
Vascular Peliosis hepatis Very rare
Connective tissue disease Amyloid Rare
SLE Rare
Polyarteritis nodosa Rare

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多発動脈瘤
・結節性多発動脈炎(PN : Polyarteritis Nodosa)などの血管炎
・分節性動脈中膜融解(SAM:Segmental Arterial Mediolysis)
・線維筋性異形成(FMD : Fibromuscular dysplasia)
・正中弓状靭帯症候群(MALS : Median Arcuate Ligament Syndrome)を代表とした腹腔動脈起始部圧迫症候群
・その他:SLE(Systemic Lupus Erythematosus)、Osler-Rendu-Weber病

Stanley JC, Wakcfield TW, Graham LM, et al: Clinical importance and management of splanchnic artery aneurysm. J Vasc Surg 3:836-840, 1986
森匡ら:脾動脈瘤の1治験例-本邦159例の集計-. 日臨外医会誌 50:2463-2467, 1989

☆本症例のkey point
・明らかな腫瘤を認めない
・肝内に複数の仮性瘤
・左腎の動脈瘤

・結節性多発動脈炎などの血管炎
・分節性動脈中膜融解(SAM : Segmental Arterial Mediolysis)
・線維筋性異形成(FMD : Fibromuscular dysplasia)
・その他:SLE(Systemic Lupus Erythematosus)、Osler-Rendu-Weber病

 

 その後の経過
 
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肝動脈塞栓後も肝下面に血腫()が増大し、貧血も進行することから外科的切除を施行
 
【開腹肝右葉切除術+胆嚢摘出術施行】
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肉眼所見 割面で8.5×7×3cm, 10×8.5×3cmの血腫を認める。明らかな腫瘍性病変は同定されない。

【組織学的診断】
・門脈域の中〜小動脈に多発する血管炎。部分的にフィブリン沈着を伴う貫壁性の壊死性炎症を呈している。
 それに伴って動脈壁内から動脈周囲に高度の炎症細胞浸潤を認める。
・浸潤細胞は好酸球・好中球・リンパ球・組織球が混在する。
・中枢側の大型血管にTAEに伴う陳旧性血栓を認める。
・肝内出血の原因として血管炎による血管破綻が疑われる。

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病理診断 :壊死性血管炎

臨床診断:結節性多発動脈炎

 

 結節性多発動脈炎

概念:中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患である。
原因: 肝炎ウイルスや他のウイルス感染を契機に発症するという報告もあるが、多くの症例では原因は不明である。
症状: 全身諸臓器に分布する中型血管の血管炎であるため、症状は多彩である。
   その症状は、炎症による全身症状と罹患臓器の炎症及び虚血、梗塞による臓器障害の症状の両者からなる。
   動脈瘤の頻度は腎動脈に最も多く(66.2%)みられる。
Pagnoux C, et al : Clinical features and Outcomes in 348 Patients With Polyarteritis Nodosa. Arthritis & Rheumatism 62(2): 616―626, 2010

 

Segmental arterial mediolysis
動脈の中膜融解に起因した動脈瘤形成を特徴とし、非炎症性・非動脈硬化性の変性疾患。
腹部臓器の筋性動脈の中膜融解をきたす。動脈瘤が同一の血管に多発する(27-35%)。
中結腸動脈(38%)、胃大網動脈(20%)、胃動脈(17%)、脾動脈(11%)。
稲田潔, 池田庸子, 林俊之: 腹部内蔵動脈の多発動脈瘤を伴うsegmental arterial mediolysis(SAM)の20例. 日臨外会誌 69:3101-3106, 2008

 

Fibromuscular Dysplasia
FMDは全身の動脈に動脈瘤や解離、狭窄に生じる原因不明の血管病変であり、若年〜中年女性に好発。
腎動脈や頚動脈に好発することが知られており、Olinらの検討では447症例中、腎動脈294例(66%)、頭蓋外頸動脈251例(56%)に病変を認めている。

 

 Take home message

本邦においてはHCC破裂に伴う肝出血が最多であるが、腫瘍像がない場合は、肝出血の原因として動脈瘤を鑑別疾患の1つとして挙げることが望まれる。その原因として血管炎も考慮する。

 


参考文献

  • Srinivasa S, et al; Spontaneous hepatic haemorrhage: a review of pathogenesis, aetiology and treatment. HPB(Oxford) 2015, 17, 872-880
  • Stanley JC, et al: Clinical importance and management of splanchnic artery aneurysm. J Vasc Surg 3:836-840, 1986
  • 森匡ら:脾動脈瘤の1治験例-本邦159例の集計-. 日臨外医会誌 50:2463-2467, 1989
  • 稲田潔ら: 腹部内蔵動脈の多発動脈瘤を伴うsegmental arterial mediolysis(SAM)の20例. 日臨外会誌 69:3101-3106, 2008
  • 大石康介ら:正中弓状靭帯症候群による背側膵動脈瘤の1例.日臨外会誌 69:2649-2655, 2008

 

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