ウエステルマン肺吸虫症、肝吸虫症 paragonimiasis westermari, clonorchiasis |
画像所見まとめ |
・右気胸、両側胸水
・すりガラス影を伴う辺縁不明瞭な結節
・胸膜肥厚および結節に連続する索状影
・胆のう壁肥厚
・肝実質内に多発性の不整形索状構造
画像所見からの鑑別診断 |
・肺吸虫症
・肺癌
・肺リウマチ結節
・月経随伴性気胸
肝臓や胆のうの所見は?
肺病変と一元的に説明できるのか?
入院後経過 |
・詳細な問診を取ると、入院2ヶ月前には宮崎県産のモクズガニを生食していた。
・出身は中国広東省で、以前より川魚の生食の習慣があった。
・病歴、血液検査所見、画像所見などから寄生虫感染症を疑い、
簡易抗体を提出したところ、ウェステルマン肺吸虫・肝吸虫の抗体がいずれも高値であった。
最終診断:ウェステルマン肺吸虫,肝吸虫の重複感染
ウェステルマン肺吸虫症 |
原因:主にサワガニ・モクズガニの生食
症状:呼吸困難感・胸痛・胸水貯留・気胸
診断:虫卵の検出、画像所見、ELISA抗体
治療:プラジカンテル
ウェステルマン肺吸虫症画像所見
急性期〜亜急性期
・すりガラス影(halo)を伴う辺縁不明瞭な結節
・胸膜から結節に連続する索状影(=虫道)
・胸膜肥厚、胸水貯留、気胸
・小葉間隔壁肥厚、気管支壁肥厚
・陰影は移動性のことがある
慢性期
・境界明瞭な不整形腫瘤、内部に壊死・空洞・石灰化を伴う
日本呼吸器外科学会雑誌 32(5);580-586:2018、 胸部のCT 第4版
肝吸虫症 |
原因:主に淡水魚の生食
症状:発熱・心窩部痛・肝細胞障害
病態:急性〜慢性胆道炎症 近年胆管癌との関連が示されている
日本消化器外科学会雑誌 48(4);328-336:2015
診断:虫卵の検出、画像所見、ELISA抗体
治療:プラジカンテル
本邦での重複感染例の報告は本症例を除いて1例のみ
Clinical Parasitology 27(1);32-35:2016
肝吸虫症画像所見
・胆道炎症に伴う所見(胆管炎、胆嚢炎、肝内胆管拡張)
・進行すると肝硬変に移行
・肝実質内の不規則な索状陰影(=虫道)
・胆管癌合併のリスクが高い
肝の画像診断 第2版
当院のウェステルマン肺吸虫症症例のまとめ |
Take home points |
・本症例は生モクズガニ摂取によるウェステルマン肺吸虫症と考えられる。
・さらに生川魚の摂取による肝吸虫症も同時に発症した稀な重複感染例と思われる。
・外国人で好酸球増多および、画像上肺や肝臓に特徴的な虫嚢・虫道を思わせる所見を認める場合、
寄生虫感染を疑い詳細な食事摂取歴の聴取や血清学的検査の追加が必要である。
参考文献
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