第 393 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年6月27日]
症例5 10歳代 女性:右上腹部痛 |
未熟奇形腫 immature teratoma |
鑑別診断 |
卵巣由来の脂肪を含む骨盤病変
・成熟奇形腫(悪性転化を含む)
豊富な脂肪性内容液や様々な組織からなり拡散強
調像で軽度高信号を呈し淡く濃染する充実成分
・未熟奇形腫
漿液性嚢胞を呈し、豊富な充実性成分と散在する充実部分内の脂肪組織
・混合型胚細胞腫瘍
優位な組織型により様々な画像所見
・莢膜細胞腫
微量な脂肪成分のみ
・成熟奇形腫と併存する腫瘍
卵巣甲状腺腫
甲状腺内のコロイド貯留を反映し、単純CTで高吸収、T1強?調像で高信号、T2強調像で低信号を呈する領域
粘液性腫瘍
各房に含まれる粘液の蛋白濃度が異なるため、房ごとに?多彩な信号を示しステンドグラス様
卵巣カルチノイド
甲状腺腫性では卵巣甲状腺腫、粘液性では粘液性腫瘍と類似の所見
未熟奇形腫 |
・胎芽期の組織に類似する未熟組織(多くの場合、未熟な神経外胚葉成分)を含む奇形腫
・大型の片側性腫瘤で、充実性ないし充実性成分を多く含む嚢胞性腫瘤を形成
・奇形腫の1%以下と稀だが、悪性胚細胞腫瘍の中では11%と4番目に多い
・神経上皮成分の割合に基づき組織学異型度が決定され、予後推定の指標とされる
異型度分類(G1は低、G2, 3は高異型度)
未熟神経上皮成分を最も多く含む標本において同成分の合計面積が低倍率(対物×4)で
Grade1:1視野の範囲に収まる。
Grade2:3視野を超えない範囲に収まる。
Grade3:3視野を超える範囲を占める。
成熟奇形腫との鑑別点
(臨床所見)
・若年発症(通常30代までに発症)
・AFPの上昇(65%程度)
・急激に増大し腫瘍径が巨大
(画像所見)
・豊富な充実成分を有し、内部に脂肪と石灰化の撒布像が見られる
・拡散強調像で著明な高信号を示す領域を認める
・嚢胞成分の主体が漿液性
take home message |
・先述の所見がなくても未熟奇形腫の場合がある
・画像所見には成熟奇形腫と未熟奇形腫はオーバーラップする部分が多い
→画像診断だけでの判定は困難なことも
しかし、未熟奇形腫かどうかで術式の決定が左右されるのに加え、
詳細な病理組織の検討で微小な未熟成分が発見されることも
→特徴的な画像所見を見たら未熟奇形腫の可能性について言及することは重要
参考文献