多形腺腫 pleomorphic adenoma |
画像所見 |
T2WI ・不均一な高信号 ・低信号の被膜様構造 |
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部位・性状 ・軟口蓋後方 ・粘膜面は軽度膨隆 ・粘膜表面の不整なし |
軟口蓋 ・軟口蓋上面 − 上咽頭 ・軟口蓋下面 − 中咽頭 ・粘膜下には小唾液腺が存在 |
画像所見まとめ
・軟口蓋後方 傍正中左側
・17x15mm大、境界明瞭な類円形腫瘤
・T1WI 低信号、T2WI 不均一な高信号、低信号の被膜構造(+)
・ADC 高値
・Dynamic造影でwashoutあり
・不均一な造影効
口蓋腫瘍の鑑別 |
・粘膜上皮由来 良性:乳頭腫 悪性:扁平上皮癌、硬口蓋癌など ・粘膜下組織由来 - 小唾液腺由来 良性:多形腺腫、小唾液腺膿瘍 悪性:腺様嚢胞癌、粘表皮癌、多型低悪性度腺癌(PLGA) - 神経鞘腫、血管/リンパ管奇形、リンパ増殖性疾患、転移 ・口蓋隆起など腫瘍類似病変 |
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診断
:小唾液腺(口蓋線)由来の多形腺腫(pleomorphic adenoma)
小唾液腺 |
・口腔、咽頭、鼻腔、副鼻腔、気管の粘膜下に広く分布
・700-1000個の腺葉群
・唾液分泌量は全体の5〜8%
口蓋線腫瘍 |
・全唾液腺腫瘍の16%、小唾液腺腫瘍の57%
・良性の多形腺腫が最多
・耳下腺に比べ悪性腫瘍の割合が高い
Ellis, G.L., Auclair, P.I. : Armed Forced Insttitute of Pathology, Washington DC, 2008, 27-48・口蓋腺腫瘍の50%が悪性
Tian Z, Li L, Wang L, et al: Int J Oral Maxillofac Surg 39: 235-242, 2010.・多形腺腫内癌など、悪性 mixed tumor は少ない
画像診断 2013 vol.3 小唾液腺・口腔/中咽頭疾患のCT, MRI
小唾液腺由来の多形腺腫 |
・多形腺腫の約10%が小唾液腺由来
・口蓋、口唇、頬、舌の順に多い
・口蓋部に生じたものは10-30mm大が多いとされるが、時に巨大化し嚥下障害や呼吸困難を生じることがある
脇本真理, 日本口腔外科学会雑誌 2011 ; 57(6) : 345-349・被膜を超えた増殖 ”finger–like tumor projection”による、再発あり
・外科的切除縁の確保が難しく、大唾液腺に比べ取り扱いが難しい
小唾液腺由来多形腺腫の画像所見
・画像所見は耳下腺や顎下腺の多形腺腫に類似
・CT : 低吸収、嚢胞変性や異栄養性石灰化を伴うことあり
・MRI : 被膜の存在と分葉状の形態が診断に有用
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小唾液腺腫瘍の悪性を示唆する所見
・小唾液腺悪性腫瘍の所見は非特異的
・小唾液腺には被膜構造が存在しないため、小唾液腺悪性腫瘍(特に腺様嚢胞癌)では早期から神経周囲進展を示す傾向がある
・必ずしも原発巣に連続せず、skip metastasisを来す場合もある
・口蓋腺腫瘍では三叉神経の第2枝と第3枝の分枝に沿った進展が多い
・大口蓋孔、翼口蓋窩、正円孔、Meckel腔を注意深く観察する
画像診断 2013 vol.3 小唾液腺・口腔/中咽頭疾患のCT, MRI
まとめ |
・軟口蓋の粘膜下病変を見た際には、小唾液腺由来を考慮する。
・小唾液腺腫瘍の診断には、神経周囲浸潤の有無を含めた評価が求められる。
参考文献
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