胃癌の子宮転移 metastatic adenocarcinoma to the uterus from gastric cancer |
画像所見まとめ |
[子宮単純MRI]
・子宮3層構造は保たれている。腫瘤性病変なし。
[単純CT]
・胃周囲〜傍大動脈、総腸骨動脈周囲リンパ節腫大
・内腸骨、外腸骨、閉鎖リンパ節腫大なし
・腹膜播種疑い
子宮内膜細胞診で class V なのに、子宮MRIで腫瘤性病変が見当たらない…
→画像上診断できない上皮内癌?
リンパの流れを考えると骨盤内リンパ節の腫大なしに、上腹部や傍大動脈リンパ節の腫大は、考えにくい。
→早期の子宮体癌と考えにくい。腫瘤がないなら、子宮にびまん性にくる腫瘍?
悪性リンパ腫の子宮浸潤
悪性リンパ腫の子宮病変はびまん性病変となりうる。
3層構造が保たれた状態で子宮は腫大し、T2WIで筋層が均一な高信号と報告される。
子宮だけで答えをだすのは難しそう・・・
CT所見のリンパ節腫大から考える‥
上腹部、特に胃周囲のリンパ節腫大が強い。
30代女性、細胞診でのadenocarcinomaも考慮。
→転移性子宮腫瘍を考えて、上部消化管内視鏡を提案。
上部消化管内視鏡 |
胃体下部小彎に不整形陥凹胃壁の拡張不良あり。→ スキルス胃癌 |
病理組織 | |
▼ 胃 | ▼ 子宮内膜 |
胃原発に矛盾しない低分化な腺癌細胞が子宮内膜に認められた。 |
胃 | 子宮内膜 | |
CD 7 | (+) | (+) |
CD 20 | (+) | (+) |
CA 125 | (−) | (−) |
→胃も子宮内膜も胃癌の発現パターンとなった。
診断:転移性子宮腫瘍 胃癌の子宮転移
転移性子宮腫瘍 |
・原発は、卵巣癌が最多だが、卵巣摘出術および子宮全摘術を施行するため、臨床的に問題になりにくい。
・日本では胃癌、欧米では乳癌が多い。
・Ngらによる検討では、子宮細胞診約60万例のうち、子宮外臓器由来の悪性細胞であったのは26例(0.12%)であり、稀である。
・Kumarらは、女性生殖器以外からの子宮転移52例の検討で、子宮のどこに(内膜and/or筋層)転移があったかを調査している
・子宮筋層転移の方が子宮内膜転移より多かった。
子宮筋層転移(+):95%、子宮内膜転移(+):36%
Kumar, NB. et al. Cancer 50.10 (1982): 2163-2169.
加藤久盛ほか:日本臨床細胞学会雑誌 1994; 33:679- 686.
結語 |
・子宮の細胞診陽性を契機に発見され、リンパ節腫大から原発巣を推測しえた、転移性子宮腫瘍の症例を経験した。
・子宮内膜転移は稀であり、本症例では子宮MRI画像の所見がはっきりしなかった。
・子宮転移を考える際には、患者背景や、
子宮以外の画像所見(リンパ節腫大の傾向、転移巣の有無など)の間接所見の収集が診断の一助になると考える。
参考文献
|