ヘルマンスキー・パドラック症候群 Hermansky-Pudlak syndrome |
経過 |
入院中にVATSを施行。 → 全体的に一様な間質性変化あり、NSIP相当
1か月後:アルビノと併せて、Hermansky-Pudlak 症候群と臨床的に診断
8か月後:呼吸困難が急激に出現。ステロイドパルス、シクロスポリン投与を行うも、酸素化は徐々に悪化。
9か月後:死亡
【最終診断】
Hermansky-Pudlak症候群
Hermansky-Pudlak 症候群(HPS) |
常染色体劣性遺伝の先天性疾患
頻度:1/50万人〜1/100万人
@眼皮膚白皮症
A出血傾向
B全身諸臓器のセロイド様物質沈着
を3主徴とする症候群
[症状]
@眼皮膚白皮症
A出血傾向
B全身諸臓器のセロイド様物質沈着
これに加え、
C間質性肺炎
D肉芽腫性大腸炎(granulomatous colitis)
E腎炎
がみられることもある。
Vandana B, et al. Blood 2011 118:4919
[診断(眼皮膚白皮症)] | |
A.症状 (皮膚症状)A-1, A-2 (眼症状) A-3, A-4 |
C.鑑別診断 以下の疾患を鑑別する。 まだら症、脱色素性母斑、尋常性白斑、炎症後脱色素斑 |
B.検査所見 1.眼底検査 2.視力検査 |
D.遺伝学的検査 遺伝子の変異 |
難病情報センター 眼皮膚白皮症(164) |
<診断>
Definite:A-1, -2とB-1をすべて満たし、さらにA-3, -4, B-2のいずれか1つ以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。
Probable:A-1, -2とB-1をすべて満たし、さらにA-3, -4, B-2のいずれか1つ以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。
[診断(HPS)]
A.眼皮膚白皮症の診断基準において、DefiniteまたはProbableである
B.出血傾向がある場合
1.血液検査により血小板機能異常を認める
D.遺伝子診断により以下のいずれかの遺伝子に病的変異が明らかである
Hermansky-Pudlak 症候群:HPS1, AP3B1, HPS3, HPS4, HPS5, HPS6, DTNBP1, BLOC1S3, PLDN
難病情報センター 眼皮膚白皮症(164)
<診断> Aを満たすのが前提
B-1を認める場合、あるいはDを満たす場合、Hermansky-Pudlak 症候群と診断する。
単純写真
全肺野で胸膜直下よりやや内側に線状・網状陰影がみられる。(⇔IPF/UIPでは下肺野の胸膜直下に網状影)
Avila NA, et al. AJR.2002; 179: 887-892.
CT
・小葉間隔壁肥厚、すりガラス状高吸収域
・重症例では胸膜下の気腫性嚢胞構造、気管支拡張、気管支血管束の肥厚などもみられる
・均等に全肺野にみられるのが特徴(⇔IPF/UIPでは下肺野優位の分布)
・気腫性嚢胞構造…上葉に強い
Avila NA, et al. AJR.2002; 179: 887-892.
鑑別疾患 | 画像所見 |
特発性肺線維症 | 下肺野・胸膜直下優位の網状構造・蜂巣肺 |
慢性過敏性肺臓炎 | 上肺野優位の分布 気道病変が強い(小葉中心性の結節・すりガラス状高吸収域、air trapping)1) |
膠原病肺 | 全身症状や臨床経過と対比 |
薬剤性肺障害 | 被疑薬中止による臨床像の軽快 |
HPS以外の家族性の間質性肺炎 | |
サーファクタントプロテイン遺伝子異常 | 上肺野/下肺野優位の双方がみられる2) 胸膜直下に嚢胞がみられることがある3) |
テロメア関連遺伝子異常 | 多くはIPF/UIP pattern 4) |
治療(間質性肺炎に対して)
・IPFに用いられるステロイドや免疫抑制薬は効果が乏しい
・抗線維化薬のpirfenidoneが HPS-1 の間質性肺炎の増悪を遅らせた、とする報告
Gahl WA, et al. Mol Genet Metab 2002; 76: 234-42・根治的治療…肺移植
結語 |
・特徴的な画像所見を呈した Hermansky-Pudlak 症候群の1例を経験した。
・CTにて、すりガラス状高吸収域や網状構造が均等に全肺野にみられるのが特徴である。
・若年者で両肺びまん性の間質性肺炎を見た時に家族性を考慮する必要がある。
参考文献
|