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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第396回症例 症例:呈示
第 396 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年11月28日]
症例3 60歳代 男性
サルコイドーシス
sarcoidosis

 

 採血データ 追加

【生化】
 IgG:1078 mg/dL, IgA:127 mg/dL,
 IgG4 29.7 mg/dL
 IgM:684 mg/dL(正常値:33-190)
 C3:97 mg/dL, C4:23.1 mg/dL,
 リウマチ因子:<5, 抗核抗体:<40
 抗ミトコンドリアM2/抗体:陰性
 抗SS-A抗体:<1.0, MPO-ANCA:<1.0,
 PR3-ANCA:<0.1
 ACE:37.1 U/L (正常値:8.3-21.4)
 IL-2 レセプター:2060(正常値:145-519)
 HIV Ag+Ab:(-)

 

 画像所見
   
造影CT  
img img
耳下腺の軽度腫大と濃染(
縦隔や肺門に10mm 前後の腫大リンパ節あり(
胃から十二指腸球部〜下行脚にかけて全周性に壁肥厚あり
粘膜を主体に造影効果を伴っている。
両側腎実質に造影効果が軽度低下した帯状, 結節様の領域が複数ある。
皮下脂肪の濃度上昇がある。
FDG-PET/CT 早期像 他院撮影  
img img
両側耳下腺(SUVmax 6.29-6.86)、左舌下腺(7.89)にFDG集積あり。
胃から十二指腸下行脚に早期像SUVmax 8.71のFDG集積を認める。
img
左鎖骨上、肺門、縦隔などのリンパ節に早期像SUVmax 3.36-5.30のFDG集積を認める。
骨格筋にびまん性の早期像max SUV 2.18〜4.26のFDG集積。
連続するように皮下の脂肪織にも軽度のFDG集積を伴っている。
 


 経過

口唇唾液腺生検
左頚部リンパ節摘出術
上部・下部消化管内視鏡:食道、胃、十二指腸生検

上部消化管内視鏡  
img ・胃〜十二指腸球部は全体的に浮腫性に肥厚
・前庭部表面は発赤してやや粗造
・幽門輪は拡大
・拡張性は保たれている
→各部位から生検
※下部消化管は異常なし

 

病理検査
【消化管】
 食道重層扁平上皮の間質、粘膜の深層、十二指腸粘膜に類上皮細胞肉芽腫の形成が認められた。
 いずれも乾酪壊死のない肉芽腫であり、アミロイド沈着は認められない。
【口唇唾液腺】
 大部分は類上皮肉芽腫の形成や線維化により破壊され、軽度のリンパ球浸潤があり、ラングハンス型多核巨細胞が混在する。
 Ziehl-Neelsen染色、アミロイド染色は陰性。
【頚部リンパ節】
 類上皮細胞肉芽腫が多数観察され、Langhans型や異物型の多核巨細胞を伴い、中心部壊死は認められない


 サルコイドーシス

最終診断 サルコイドーシス

診断基準
・全身のいずれかの臓器で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性
・既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できている者
・後述の特徴的な検査所見および全身の臓器病変を十分に検討すること

【特徴的な検査所見】
両側肺門リンパ節腫脹
ACE活性高値または血性リゾチーム値高値
sIL-2R高値
・Ga-67 citrateシンチグラフィまたはF-18 FDG PETにおける著明な集積所見
・気管支肺胞洗浄検査でリンパ球比率上昇、CD4/CD8比が3.5を越える上昇
サルコイドーシス診断基準 2015
日本サルコイドーシス/肉芽種性疾患学会

消化管病変

【頻度】<1%
 食道から直腸まで発生するが、最も多いのはであり、その他はまれ。→頻度:胃>大腸>食道、小腸。
【症状】
 症候性消化管サルコイドーシスの発生率は0.6%との報告がある。
 食道病変では、嚥下障害や体重減少を認め、下部消化管では消化管出血や貧血、慢性的な下痢や腹痛を呈するとされる。
【特徴】
 胃:結節性隆起性の粘膜病変、びまん性肥厚、潰瘍
 小腸:全周性の壁肥厚が生じる場合がある
 結腸:癌に似た腫瘤性病変として現れる場合がある
【鑑別】
 消化管に限局した病変では結核や真菌感染症、寄生虫感染炎症性腸疾患、ウィップル病などの肉芽腫性疾患、
 悪性リンパ腫や胃癌などが鑑別になる。
Sones M et al. Arch Intern Med 102:766–776
Wolfgang Dahnert.Radiorogy Review Manual 8th edition:666-670
 J.Farman et al. Abdom Imaging 1997:248–252

 

 胃病変を来す他の全身疾患

・IgG4関連疾患
胃病変は15例報告されている。
11例は孤立性胃病変で4例は他臓器の病変を伴っていた。
ほとんどが限局性病変(ポリープや結節様)であり、壁肥厚が見られたのは1例のみであった。
David Yurui Lim et al. Radiology Case. 2018 Sep: 12:9-20 ・アミロイドーシス
胃病変はCTでは所見が軽微で、壁肥厚が認められることがある。
23人の患者を対象にした研究では4人(17%)は粘膜下を主体とした肥厚が見られた。
Masuyao Miyake et al.日臨外会誌 2015:76,32―36

腎病変
■腎病変
【頻度】0.2-5%
【症状】腎機能低下
【特徴】
 結節様や帯状の造影不良域
 石灰化、腫大、萎縮

筋病変
【頻度】6-20%
【症状】皮膚症状を伴うことがあるが無症候性が多い。
【特徴】腫瘤型やミオパチー型などに分類される。

唾液腺病変
■唾液腺病変
【頻度】耳下腺 6%、その他 30%
【特徴】
 CTでは唾液腺自体の腫脹やリンパ節腫脹。
 Ga-67 citrateシンチグラフィでは耳下腺、涙腺、鼻に取り込まれる “Panda sign” が知られている。
Tamada tutomu  et al. 日サ会誌 2013;33:35-42
Wolfgang Dahnert. Radiorogy Review Manual 8th edition:666-670
Hiroki Matsuura et al. An International Journal of Medicine, 2017:529


 Take home message

・消化管、腎病変など比較的稀な病変が多発するサルコイドーシスの1例を経験した。
・サルコイドーシスは一部で比較的特異な病変があるものの、非特異的な病変も多いため、
  複数の臓器病変と併せて総合的に判断する必要がある。

 

 


参考文献

  • Sones M et al. Arch Intern Med 102;766−776
  • Tamada tutomu et al. 日サ会誌 2013;33:35-42
  • Naciye Sinem Gezer et al. Diagn Interv Radiol 2015;21:111-117
  • Eva Criado et al. RadioGraphicsVol 2010;30, No. 6
  • Bobbak Vahid et al. Digestive Diseases and Sciences 2007;Volume 52,p 3316−3320
  • サルコイドーシス診断基準 2015 日本サルコイドーシス/肉芽種性疾患学会
  • Hiroki Matsuura et al. An International Journal of Medicine, 2017, Page 529
  • Takahisa S et al. 日消誌 2004;101:1340-1343

   
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Moderator: 大野 敏寛