第 400 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年4月27日]
症例4 70歳代 女性:右側腹部痛 |
落下胆石による多発腹腔内膿瘍 Intraabdominal multiple abscesses caused by spilled gallstones |
鑑別診断 |
1.腹腔内・肝多発結節
2.左腎腫瘍の疑い
腫瘍性
転移
原発:左腎、大腸癌、卵巣
腸管膜発生
カルチノイド
非腫瘍性
腸間膜脂肪織炎
胆嚢摘出術に関連
落下胆石による腹腔内膿瘍 |
・腹腔鏡下胆嚢摘出術は開腹術に比べ操作が制限されることに加え、高度炎症例への適応拡大などにより6〜40%で胆嚢損傷が生じる1
・腹腔内へ漏出した胆汁や胆石を核として炎症性肉芽腫や膿瘍が形成されることがある
・5.7%で胆石流出、0.08%で膿瘍に対する再手術となった報告あり2
・膿瘍発症時期は1ヶ月〜180ヶ月と術後10年以上経ってからの発症もある1
・腹痛、発熱、嘔気嘔吐、腹部の腫脹などが主な症状1
・膿瘍は腹腔内>腹壁>後腹膜の順に多い1
・右横隔膜下やMorison窩に多く3、波及して肝膿瘍を形成する例も4
・FDG-PETで集積を認め腹膜播種との鑑別を要することがある5
・CT/エコーで膿瘍に石灰化を認めるのは66%で、21%は同定できない6
・コレステロール結石やカルシウム含有が低い結石は検出できない可能性がある
・腎癌は血行性転移が主体で肺や肝、骨に多く、腹膜転移は2%と稀である7
・大腸癌、卵巣癌の転移も高確率で石灰化を来すため8、鑑別は難しい
・腸管膜原発カルチノイドは70%で石灰化をきたす9が多発は稀
・腸管膜脂肪織炎は原因不明の疾患で腫瘤を形成することもある10。石灰化は稀
⇨ 転移・播種は鑑別に残るが、手術歴や分布が診断に有用と思われる
参考文献