東京レントゲンカンファランス(TRC)400回記念大会に312名(新宿会場112名、オンライン出席200名)の先生方にご参加いただき、また8例のmoderators からは印象に残る症例を、それぞれdiscussers,には論理的な解説をいただき、盛会に終えることができました。また齋田幸久先生、福田国彦先生から400回記念寄稿文をいただき、ホームページに掲載されていますので、是非一読ください。
私事ですが、はじめてTRCに“連れていかれた”のは1985年(昭和60年)です。当時は実際のフィルムをオーバーヘッドプロジェクター(OHP)を用いて症例提示する方法で、投影する際にファイルの上下左右を合わせるのに苦労しました。私の恩師、多田信平先生の著書に「1枚のX線写真から―鑑別診断の進め方と考え方(1988年、大場覚先生と共著、金原出版)」があります。単純X線写真を中心に数枚の画像から、鑑別診断を進めてゆく、まさにTRCの「遺伝子」そのもの内容です(残念ながら、絶版で入手できないのですが)。
現在ではTRCではCT、MR、PETが中心ですが、私の初めてのdiscusserの経験は、小野由子先生から出題の、頭部単純写真2枚から「中頭蓋窩病変」を診断するもので、正解にはいたりませんでしたが、鑑別疾患のひとつに入れることができたのを覚えています。それから20年余がたって小野先生にお会いしたときにそのTRCの出題の話をしたら、「私、そんな意地悪な出題をした? でもいい問題だったでしょ!(笑い)」。
そんな諸先輩の影響もあってか、私自身もmoderatorとして、骨盤単純写真1枚のみ、頭部単純CTのみ、胸部単純写真1枚のみの出題をしたことがありますが、いずれもdiscusserからは「Paget病」、「ミトコンドリア脳症」、「大動脈縮窄症」の正解をいただきました。現在の日常の診療では、ひとつひとつの症例に「1枚のX線写真から」時間をかけて熟考する余裕はなかなかありませんが、TRCはその良い機会となると思います。 |