第 400 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年4月27日]
症例6 50歳代 女性:腹部超音波検査で肝腫瘤を指摘された |
肝細胞腺腫 HNF-1α 不活化型 Hepatocellular adenoma, hepatocyte nuclear factor 1α(HNF1α) -inactivated |
鑑別診断 |
Microscopicな脂肪含有する肝腫瘤の鑑別
・肝細胞癌
・肝細胞腺腫
・血管筋脂肪腫
・転移性肝腫瘍 (腎細胞癌、奇形腫など)
・FNH
肝細胞腺腫 |
肝細胞腺腫の亜分類(WHO分類2020), Unclassified を除く | |||
HNF1α 不活化型 HCA (H-HCA) |
炎症型 HCA (I-HCA) |
Βカテニン活性型 HCA (b-HCA) |
|
頻度(欧米) | 35-40% | 50-55% | 5-10% |
背景 | 女性 経口避妊薬 |
大多数が女性 飲酒、肥満, 脂肪肝と関連 |
男性例も多い アンドロゲン |
画像的特徴 | 脂肪含有(+) 早期相造影効果(+) 後期相wash out EOB 低信号 FDG-PET/CT 高集積 |
強いT2WI高信号( atoll sign) 強い早期濃染 後期相造影効果残存 EOB 低信号 |
出血、壊死(+) 早期濃染 後期相±washout EOB 等信号- 高信号 |
組織学的特徴 | びまん性の脂肪化 核異型が少ない |
炎症細胞浸潤 類洞拡張 |
核異型が目立つ |
変異遺伝子 | HNF1α | IL6, STAT3, JAK1 | CTNNB1 |
免疫組織的特徴 | L-FABP 減弱 | SAA陽性 CRP陽性 |
GS びまん性発現 Beta-cateninの発現 |
Balabaud C, Int. J. Hepatol, 2013
Zulfiqar M, JMRI, 51:1630-1640
Katabathina VS, RSNA, 31:1529-1543
特徴
・正常肝を背景に発生する良性腫瘍(4/100000人)
・特にアジアで頻度が低い
・85%が若年〜中年が多い(平均年齢38-41歳)
・女性に多い
・10個以上多発すると肝細胞腺腫症(adenomatosis)
・遺伝子異常、病理学的に亜型が分類されており、亜型により癌化のリスクが異なることが提唱されている
HNF1α 不活化型 HCA (H-HCA) |
炎症型 HCA (I-HCA) |
Βカテニン活性型 HCA (b-HCA) |
|
臨床的特徴 | 悪性化(稀) | 悪性化(+) 出血の合併(+) |
悪性化(++) 特に男性 |
Balabaud C, Int. J. Hepatol, 2013
Zulfiqar M, JMRI, 51:1630-1640
Katabathina VS, RSNA, 31:1529-1543
Take home message |
・HNF1α不活化型肝細胞腺腫と高分化型HCCは類似した画像所見を呈する場合があるが、病理像も類似する場合がある。
・画像上、肝細胞腺腫も鑑別となる場合は、免疫染色の追加による病理診断も考慮する必要がある。
参考文献