播種性腹膜平滑筋腫症
disseminated peritoneal leiomyomatosis |
画像 |
単純CT axi |
造影CT axi |
T2WI axi/T1WI axi |
DWI axi/ADC map |
画像所見まとめ
・辺縁平滑な腹腔内多発腫瘤。造影CTで均一な増強効果を呈する。T1WIで筋と等信号、T2WIで軽度高信号。DWI高信号、ADC低値。
・軽度の腹膜肥厚。
・少量の腹水貯留。
・子宮全摘出術後。
腹水 | 腹膜 | 大網 | 腸間膜 | その他関連徴候 | |
悪性リンパ腫 (リンパ増殖性疾患) |
腹水あり | 大網や腸間膜への腫瘍浸潤や腹膜肥厚がみられることあり | サンドイッチ徴候 脾腫 消化管病変 |
||
播種性腹膜平滑筋腫症 | 基本的に腹水無し | 多発結節 | 多発結節 | 腸間膜結節がみられることあり | 妊娠、経口避妊薬 子宮筋腫手術歴 |
GIST | 基本的に腹水無し | 消化管壁、大網、腸間膜への浸潤がみられることあり | 消化管の原発性腫瘍 | ||
癌腹膜転移 | 腹水あり | 不規則な腹膜肥厚、播種結節 | omental cake形成 | 結節を伴う腸間膜脂肪への浸潤 | 原発性腫瘍の有無 |
腹膜中皮腫 | 腹水あり | 不規則な腹膜肥厚、播種結節 | omental cake形成 | 腸間膜腫瘤がみられることあり | アスベスト暴露歴 胸膜プラーク |
結核性腹膜炎 | 腹水あり | 平滑な腹膜肥厚 | 大結節を伴う大網や腸間膜への浸潤 | 壊死性リンパ節腫脹 回盲部壁の浸潤 脾臓石灰化 |
|
腹膜偽粘液腫 | ムチン性の腹水 肝や脾のscalloping |
横隔膜腹膜および大網膜に好発 | 稀 | 虫垂腫瘤 | |
脾症 | 基本的に腹水無し | 脾臓に類似した増強パターンを有する結節 | 稀 | 脾臓摘出の既往 |
生検CT画像 |
病理診断:Disseminated peritoneal leiomyomatosis(DPL)
臨床経過
17年前:腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM)
3年前:子宮筋腫再発に対して腹腔鏡下子宮全摘手術
受診:左下腹部痛でCT、MRI施行。腹腔内多発腫瘤を指摘。
2ヶ月後:腹腔内多発腫瘤に対してCTガイド下生検
3ヶ月後:開腹腫瘍摘出手術
|
||
播種性腹膜平滑筋腫症(DPL) |
・腹膜表面に沿って増殖する多発性平滑筋腫瘍を特徴とするまれな良性疾患。
・1952年にWilsonとPealeによって初めて報告され、1964年にTaubertらによって正式に命名。
・子宮の原基であるミュラー管と共通の起源をもつ腹膜の未分化間葉系細胞がエストロゲン刺激により平滑筋細胞に分化することで発症する理論が提唱されている。
・妊娠や女性ホルモン剤長期使用が関係するとされているが、近年は腹腔鏡手術による子宮筋腫核出術や子宮全摘手術後に発症する報告が増加している。
DPLの画像的特徴
・多発性の腹膜結節。辺縁平滑で比較的均一な増強効果を呈する。
・MRIでは平滑筋と同程度の信号を示すのが典型的。
・リンパ節腫脹は見られない。
・・・ただし画像上、腹膜平滑筋腫と腫大リンパ節を区別することが難しい場合がある。
・腹膜肥厚を呈することは少ない。
・多量腹水を呈することは少ない。
結語 |
・播種性腹膜平滑筋腫症の1例を経験した。
・播種性腹膜平滑筋腫症は稀な疾患であるが、子宮筋腫の既往がある女性の多発腹腔内腫瘤を見た場合、鑑別に置く必要がある。
参考文献
|