●症例 2  60歳代 女性

●病理診断:
 Thymic carcinoma with invasion to the left lung (S3)
 poorly differentiated squamous cell carcinoma

【病理所見-マクロ像】
検体;胸腺と肺(右S3)が合併切除されている
   10×11×6cm
   白色、分葉状の腫瘤、内部に出血
      
【胸線上皮性腫瘍】
・前縦隔腫瘍の中で最多
・病理学者により、その組織分類はさまざま
・周囲組織への浸潤を認めないものを非浸潤性胸腺腫
       浸潤を認めるもののうち
         細胞異型のないものを浸潤性胸腺腫
         細胞異型を伴うものを胸腺癌
 とするのが一般的

【胸腺癌のCT所見】
・比較的均一な前縦隔の軟部腫瘍
  *不明瞭な低濃度帯→内部の壊死・変性を反映
  *石灰化をともなうこともある
・縦隔脂肪の消失
  *癒着のみの場合でもしばしば見られ、必ずしも周囲浸潤を反映しない
・周囲臓器への不整な壁の突出
  →周囲臓器への浸潤を反映
・縦隔リンパ節腫大
・他臓器転移(肺、副腎、肝)

* 画像的に浸潤性胸腺腫との鑑別はしばしば困難
 リンパ節腫大や他臓器転移が決め手となることも多い

【胸腺癌のMRI所見】
・辺縁不整
・T1W−筋と同程度の信号強度
・T2W−中間から高信号の不均一な信号強度
  →比較的低い信号強度のものは扁平上皮癌
   組織学的に腫瘍内の多量の膠原線維を反映
・内部の分葉構造(−)
  *内部の分葉構造は浸潤性胸腺腫に多いとされている
・他臓器転移
・胸水貯留

【参考文献】

  1. 櫛橋民生ほか. 胸腺癌と胸腺腫のMRI所見. 臨床放射線 1998 ; 43 (1) : 153-161
  2. Lee JD et al. CT findings in primary thymic carcinoma. JCAT 1991 ; 15 : 429-433
  3. Do YS et al. CT findings in malignant tumors of thymic epithelium . JCAT 1995 ; 19 : 192-197
  4. 遠藤正浩ほか. 胸腺腫瘍のMR imaging診断の有用性に関する検討 -病理像との対比検討-. 日本医放会誌 1993 ; 53 (1) : 1-10
  5. 加藤雄二ほか. Thin-secton CT画像を用いた胸腺腫瘍の画像診断. 肺癌 1998 ; 38 (7) : 855-862
  6. 下里幸雄. 胸線上皮性腫瘍亜分類の変遷とその問題点. 病理と臨床 1995 ; 13 (6) : 877-885
 
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moderator : 豊田真規子



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