●症例 8  70歳代 男性

●確定診断とその説明:
<確定診断>
 腹腔鼠
その他、以下の名前でも報告されている。
腹膜石、腹腔内遊離体、intraperitoneal loose body、peritoneal loose body、intraabdominal free body、peal body等。

<疾患概念>
蛋白質と燐酸カルシウムを主成分とする腹腔内の遊離結石

<病因>
何らかの病的変化(梗塞、捻転、感染等)により、石灰変性を来した腹膜垂が腹腔内に脱落することにより、形成されると考えられている。

<病態>
通常は無症状で、開腹手術の際に偶然発見されることが多い。

<診断>
腹腔内の石灰化病変として認められるが、非特異的で術前診断は難しい。体位変換による病変の移動が認められる場合には腹腔鼠が示唆される。

病理像x4 病理像x10
<病理像(x4、x10)>
層状の石灰化が認められ、腹腔鼠として典型的である。


<腹膜垂の解剖>

腹膜垂は腸間膜付着部の反対側に存在する。直腸を除く大腸全域に認められ、横行結腸では自由紐に沿って1列に、上行結腸、下行結腸では自由紐、大網紐の2列に、S状結腸では不規則に認められる。頸部の捻転、終末動脈の閉塞といった血行障害や、憩室炎、腸炎等の波及による炎症などを来しうる。

参考文献
・津田他:腹膜石。別冊日本臨床、領域別症候群11(腹膜・後腹膜・腸間膜・大網・小網・横隔膜症候群):341-342。
・小林他:腹膜垂炎。別冊日本臨床、領域別症候群11(腹膜・後腹膜・腸間膜・大網・小網・横隔膜症候群):72-75。

 
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moderator : 魚住和史



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