例3 60歳代 女性

入院後経過

ERCP施行するも陰性胆嚢にてENGBDできず。胆汁細胞診でもclass II であったため、診断目的および炎症軽減目的でPTGBD施行。排液の細胞診にてclass V (squamous cell carcinoma)と診断され、胆嚢癌の確定診断に至った。その後腫瘍マーカーが追加測定され、CYFRA 6.4(<3.5) ng/ml、SCC 11.6(<1.5) ng/mlであった。

手術

拡大肝右葉切除(D2+α郭清)、胆管切除、左肝管空腸吻合、胃空腸吻合


病理所見

  • クロマチン増量・核形不整・大小不同を示す類円形腫大核と多角形好酸性胞体からなる腫瘍細胞が、著明な角化傾向を示し扁平上皮様の重積を示しつつ乳頭状、索状、胞巣状に浸潤増殖する像が主体としてみられた。管状腺癌成分も少量混在していた。
  • 癌近傍の肝S5〜7にかけては比較的大型の門脈分枝の閉塞像が散見され、地図状の線維化が広範に認められた。腫瘍細胞は認められなかった。
  • 黄色肉芽腫様の炎症像も局所的に認められた。
 

診断:胆嚢腺扁平上皮癌

区分:胆嚢癌 占拠部位:patGbfnC 
肉眼形態:塊状型 大きさ:68×67×64mm 
組織型:asc (scc>>tub1>tub3) 
間質:中間 
INF:α 深達度:si(十二指腸) 
pHinf:3γ pGinf:0 pPanc:0 pDu:1 pPV:0
pA:0 pN:2 pHM:0 pDM:0 pEM:0 
v:1 ly:1 pn:0

⇒ stage IV b


胆嚢扁平上皮癌

  • 頻度
    胆嚢癌の組織型では腺癌が圧倒的に多く、扁平上皮成分を有するものは1.4〜12.7%、扁平上皮癌に限ると1.4〜3.3%と極めて稀。
  • 性差
    男:女=1:2.4
  • 主訴
    疼痛、腹部腫瘤、発熱、体重減少、黄疸など組織発生
    1) 化生性扁平上皮からの癌化説
    2) 胎生期に迷入した異所性扁平上皮の癌化説
    3) 未分化な基底細胞からの癌化説
    4) 腺癌から扁平上皮癌への化生説  ⇒最も有力
  • 特徴
    1) 急速に増大し、大型腫瘤を形成しやすい。
    2) 肝臓など隣接臓器に直接浸潤する。
      胆道閉塞、消化管閉塞・穿孔を来たすこともある。
    3) リンパ行性・血行性転移、腹膜播種は少ない。
     (本症例ではリンパ節転移が認められたが、全て腺癌成分であった。)
    4) 壊死傾向が強く、炎症反応を伴うことが多い。
  • 予後
    高度に進行している状態で発見されることが多く、1年死亡率は40%と予後不良

(参考文献)

  • 石川 義典ほか:胆嚢扁平上皮癌の1例.J Nippon Med Sch 2004;71(6)
  • Min-Jeong Kim:Unusual Malignant Tumors of the Gallbladder.AJR:187,August 2006
  • 野中 杏栄ほか:胆嚢腺扁平上皮癌の4例.日消外会誌 1994;27(8)
  • 阿部 幹ほか:胆嚢扁平上皮癌の2例.日消外会誌 1993;26(5)
 
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Moderator : 坂口 千春