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第321回東京レントゲンカンファレンス
2010年5月27日
症例1 30歳代 男性
   

進行性多巣性白質脳症
progressive multifocal leukoencephalopathy



画像所見のまとめ

【CT】
・両側大脳半球、皮質下白質に多数の斑状
・低吸収域あり。非対称性である。
・腫脹はなく、むしろやや萎縮している。
【MRI】
・白質病変は、U-fiberを含み、T1WIで低信号、T2WIで高信号であり、
 DWIで淡い高信号を示しているが、T1WIで低信号の部位は、DWIでも低信号を示している。
・造影効果はない。
1ヶ月の経過で病原部の増大を認める。
【感染症 】
 Q.TPLA: 2202 SU/ml, HBs抗原 (-), HCV抗体 (-), HIV抗体 (+), CMV抗体 (-),
 トキソプラズマ抗体 (-), クリプトコッカス抗体 (-)  アスペルギウス抗体 (-)
【自己免疫関連】リウマチ因子抗体<10, 抗核抗体<20, CD4+リンパ球:93/μl
【電解質、甲状腺機能】特記事項なし


髄液検査よりJCウイルスDNA検出
進行性多巣性白質脳症
progressive multifocal leukoencephalopathy
( PML )

 


進行性多巣性白質脳症
progressive multifocal leukoencephalopathy ( PML )

・免疫不全患者に症じる進行性・致死性の脱髄   疾患である。
・ HIV陽性例、リンパ腫、白血病、免疫抑制剤使用     例などに合併。
・ JCウイルスが原因であるが、成人では約40〜80%に不顕性感染している。
 免疫抑制状態下にJCウイルスが再活性化され、中枢神経のoligodendrocytesに感染・障害し、脱髄巣を形成する。

〜 PMLの画像所見 〜
【局在】多発性、非対称性、皮質下白質(U-fiberを含む)、脳梁、視床、基底核、内包、外包 (脳幹、小脳はまれ)

【MRI所見】
・T1WIで低信号、T2WIで高信号。
・DWIでは、脱髄前の膨化した細胞により拡散が低下する部位と、oligodendrocytesが消失し細胞外腔が拡大、拡散が亢進する部位があるため、信号域の部位と低信号域の部位が認められる。
・原則として、造影効果やmass effectはない。( HIV治療中に一過性に増悪することあり。)

【確定診断】脳脊髄液からJCウイルスの検出

【予後】非常に不良
 最近では、HIV例では強力な抗HIV療法により予後の延長例もある。 

 

抗HIV療法中

 

発症から6ヶ月後

 

鑑別疾患として
HIV脳症
・HIVが直接的に脳を障害
・白質病変で、比較的限局性のものから広範 のものまでさまざまで、脳幹や小脳にも進展
脳萎縮あり。
・PMLに比較し、進行は緩徐
DWIで異常はない
臨床的には痴呆が主症状

 


 
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Moderator: 阿部 香代子