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第326回東京レントゲンカンファレンス
2011年1月27日
症例4 70歳代 女性
   

糖尿病性舞踏病/高血糖性舞踏病
diabetic chorea


 

初診 単純CT

入院8日後 MRI DWI

入院8日後 MRI T2WI

 

画像所見のまとめ
・T1WIで両側レンズ核(被殻主体)が高信号。
・発症約2ヶ月後に信号強度は最も強くなり、その後, 月単位で緩徐に改善傾向。
・単純CTではレンズ核に石灰化を認めず、ごく軽度高吸収を呈す。
・DWIではレンズ核に特異的信号変化は認めない。
・T2WIではレンズ核の一部が、低信号を示す。

T1WIで基底核が高信号を示す病態(本症例で鑑別すべき病態)
・生理的石灰化:両側の淡蒼球に多い。
・肝機能障害:肝臓で代謝されないマンガンなどの微量元素が沈着するため、両側の淡蒼球がT1WIで高信号になることがある。
・高血糖脳症 → 糖尿病の既往あり!
 初診時 BS 449 mg/dl, HbA1c 13.9 %

入院後の経過
・食事療法、薬物療法(ボグリボース内服およびインスリンスライディングケール)による血糖コントロールを開始し、血糖値は10日程で平均200mg/dl前後へ、低下していった。HbA1cは入院2ヶ月程で6.9%まで、徐々に低下した。
・不随意運動に対し、抗精神病薬(ハロペリドール)の定期内服を行った。
・上記治療により、入院6日目には、不随意運動は消失し、その後、再燃は認めていない。

臨床診断
・T1WIで両側被殻が高信号を示した。
・血糖コントロールにより、両側性の不随意運動は改善した。
・T1WIでの信号変化は月単位で緩徐に改善傾向。
 ↓
糖尿病性舞踏病/高血糖性舞踏病

 

糖尿病性舞踏病/高血糖性舞踏病
・一過性に著明な高血糖状態を来した場合に生じる、不随意運動を主とした脳症。
・基底核(特に被殻)が単純CTで軽度高吸収を示し、MRIではT1WIで高信号を示す。T2WIの信号強度の報告はさまざま。
・片側性、両側性、どちらも生じうる。
・治療により、病変部の信号は数ヶ月〜数年で改善する

【T1WIで基底核が高信号を示す原因】
微小出血やグリオーシス、髄鞘崩壊などが推定されている。

【舞踏病様運動などの不随意運動を来す機序】
被殻や尾状核からは、淡蒼球を介した視床への抑制性線維が投射されている。
 ↓ 
被殻や尾状核の障害により、視床が脱抑制状態に陥り、不随意運動が生じる。

 

 

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Moderator:森 なお子