pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM) |
症例のまとめ
■胃癌術後(IIc 38×35mm por 2 intermediate INFβ mp ly0 v0 ow- aw-)
■補助化学療法中に動悸・労作時呼吸困難で発症
■呼吸状態は急速に悪化し、およそ1週間の経過で死亡
■画像所見のまとめ
胃癌術前・術後経過の胸部単純X線写真および胸部CTを比較すると
・縦隔・肺門リンパ節腫大があり胃癌再発(リンパ節転移)が示唆される
・右心系拡張、肺動脈の中枢〜末梢にかけて拡張しており、肺動脈高血圧を示す(中枢側肺動脈血栓塞栓症は認められない)
・右肺底区末梢の限局性のconsolidationは非特異的で、炎症性病変や肺梗塞などを疑う(癌性リンパ管症等を示唆する所見は認められない)
■臨床情報の追加
・UCG所見:右心負荷(肺動脈ピーク推定圧は63mmHg )
■剖検所見
・肉眼所見:肺の一部に出血性梗塞、胸水、右室拡張、肝静脈拡張(経度)
・顕微鏡所見:肺動脈(細動脈レベル)が、腫瘍細胞を含む血栓と線維細胞性増生からなる内膜肥厚により閉塞し、肺動脈壁には肥厚(肺高血圧に伴う変化)が、肺全体に認められた
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Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)
■肺動脈腫瘍塞栓症の特殊型
・肺の筋性動脈以下の細小動脈が腫瘍塞栓と、血栓および血管内膜の線維細胞性増生により閉塞
・腫瘍細胞は完成された病変のごく一部に存在するに過ぎず、単純に腫瘍細胞塊が肺動脈を塞栓する肺動脈腫瘍塞栓症とは異なる
■急速に進行する呼吸不全、肺高血圧・肺性心・(溶血性貧血・DIC)
■癌患者剖検症例の0.9-3.3%
・630例中21例(3.3%)・・・19例が腺癌で胃癌11例、印環細胞癌+粘液癌が高頻度(Cancer 1990; 66: 587-592)
■画像所見
・末梢肺動脈腫瘍塞栓・線維細胞性内膜肥厚による多発する微小結節,末梢動脈の数珠状拡張, tree-in-bud pattern
・肺高血圧による肺動脈拡張、右心系拡大
・肺梗塞を生じた場合には末梢楔状consolidationが認められる
・その他:小葉間隔壁の肥厚,すりガラス状濃度上昇などを伴うことがあることが報告されている
(J Clin Oncol 2007; 25: 597-599, Radiology 1993; 187: 797-801 , Am J Roentgenol 2002; 179: 897-899)
***PTTMに特異的な画像所見はないが、担癌患者における急速に進行する呼吸不全を診た場合、肺動脈血栓塞栓症やがん性リンパ管症ではないことを確認し、PTTMの可能性を指摘することが重要
■診断
・確定診断には肺組織診が必要だが、患者の状態が侵襲的検査を許さないことが多い
■治療
・腫瘍細胞量が減少し内膜増殖刺激が低下することを期待して化学療法をおこなうというのがオーソドックスではあるが、ほとんどの患者が呼吸困難の出現から1週間以内に死亡(J Clin Oncol 2007; 25: 597-599)するといった現状では、導入困難なことが多い。
・その他、内膜の線維細胞増殖を誘導する経路を遮断するセロトニン拮抗薬や、PPHに対して用いられているprostacyclin誘導体の有用性は期待されているが実証されたものはない(J Postgrad Med 2009; 55: 38-40)
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