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第330回東京レントゲンカンファレンス
2011年9月22日
症例8 30歳代 女性
    石灰沈着性頸長筋腱炎
calcific tendinitis of longus coli


 

CXP

 C1 1-10mm
 C2 < 7mm


MRI assessment of the pre-vertebral soft tissues in acute cervical spine trauma.Br J Radiol. 1999;72:818-23.
STIR2  

 


T2WI
 
CT(非提供)

 

画像所見のまとめCXP:側面像で環軸前弓前面に石灰化を 疑う筋状の高吸収域
MRI:左頸長筋の浮腫を疑うT2延長と腫脹,および筋付着部の著明なT2低信号 後咽頭間隙の液貯留
CT:左頸長筋の腫大と石灰化 後咽頭間隙の液貯留

鑑別診断 ・咽後膿瘍
・石灰化頸長筋腱炎
・脊椎硬膜外膿瘍
・化膿性脊椎炎
・後咽頭リンパ節炎
・環椎前弓下副小骨

本症例の入院後経過・7月25日 左頸部痛が出現。
・7月28日 症状増悪し整形外科受診。咽後膿瘍が疑われ、耳鼻科入院。抗生剤点滴とステロイド投与、安静による加療が行われた。
・8月3日 CTを見直したところ頸長筋の石灰化に気付かれ、石灰化頸長筋腱炎が疑われNSAIDsの投与が追加された。
・8月5日 症状、画像所見とも改善し、退院。

診断 石灰化頸長筋腱炎
・Calcific tendinitis of the longus colli
・Acute calcific retropharyngeal tendinitis

疾患の一般的事項・好発:20~50歳代
・原因:不明,過使用による乏血・変性?
・症状:頸部痛,頸の可動域制限,発熱,嚥下障害,咽頭痛
・経過:数日の経過で発症,2週間程度で軽快
・治療:局所安静、非ステロイド性抗炎症薬
・病理:頸長筋腱へのハイドロキシアパタイトの沈着と破裂による炎症
・肩関節に好発する石灰沈着性腱炎と同様の病態

石灰化頸長筋腱炎の画像所見 ・単純写真:側面像で環軸前弓前部の石灰化
・CT:頸長筋(付着部)に沿った石灰化
・MRI:頸長筋に沿った炎症、浮腫を反映した軟部組織の腫張,T2延長

・CTが最も感度が高い

鑑別疾患との合致点、相違点・咽頭周囲膿瘍、咽後膿瘍、脊椎硬膜外膿瘍
  症状は類似
  膿瘍辺縁部の増強効果
・化膿性脊椎炎
  椎体、椎間板への炎症波及
  頸椎<腰椎
・後咽頭リンパ節炎
  リンパ節中心部の低吸収
・環椎前弓下副小骨
  環軸前弓前面の過剰骨
  一般に症状がない
・放射線治療、内頸静脈切除後の二次性浮腫

Take home message ・急性経過の成人の頸部痛、咽頭痛をみたら、石灰化頸長筋腱炎を鑑別の一つと考える
・稀な疾患とされているが、咽後膿瘍等と診断され自然軽快している症例が数多くあると考えられている
筋に沿った石灰化を見逃さない
・画像所見は比較的特異的で、不要な手術や治療が行われないよう知っておくべき疾患

 

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Moderator:村上 瑞穂