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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第336回症例症例:呈示
第 336 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年5月24日]
症例7 50歳代 男性 
 眼窩内骨膜下血腫
 intraorbital subperiosteal hematoma

 

背景疾患として サルコイドーシス

臨床診断群として、
・全身反応を示す検査所見:肺・心臓
・サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見:ツベルクリン反応陰性、Gallium-67 citrateシンチグラムにおける著明な集積所見

以上の項目が該当し、診断基準を満たした。

心不全は心サルコイドーシスによるものであった。

精査のカテーテル検査 = 心筋生検 → 右室穿孔 → 心タンポナーデ

 

 画像

眼窩部単純CT (カテーテル検査3日後)

・骨直下に紡錘状・凸レンズ型を示す
・右側は上直筋は圧排・偏位を受けているが、視神経への圧排は認めない

 

・凸レンズ型の形状がよく分かる

 

 所見のまとめ

・局在:両側眼窩、筋円錐外、骨に接して
・形状:紡錘状・凸レンズ型
・内部の性状:均一、高吸収(CT値:80HU)

急性発症(心タンポナーデ後の)

CT(3日後/9日後/1ヶ月後)

・9日後:血腫は大きさはほぼ同じ、吸収値は低下
・1か月後:消失

 

眼窩病変の診断は? …… 眼窩内骨膜下血腫

 

 眼窩内骨膜下血腫

【原因】
・外傷性:最多、骨折を伴うことが多い
・非外傷性:静脈圧上昇(咳嗽・運動・スキューバ等)
・血管病変(動静脈奇形等)
・血液疾患(血友病・白血病等)
・特発性 (副鼻腔炎との関連が疑われている)
【若い男性に多い】
【部位】前頭骨側に多い
【治療】
・保存的治療:視神経圧排による視力障害がなければ
・観血的治療(穿刺吸引・血腫除去術)

今回は心タンポナーデ時の静脈圧上昇が主な原因と考えられ、ワーファリンによる易出血性も関与していたものと推測される。

 

 

 筋円錐外の腫瘤性病変の鑑別疾患

Common
Benign Mixied Tumor, Lacrimal
Lymphoproliferative Lesions, Orbit
Idiopathic Orbital Inflammatory Disease
Hematoma, Orbit

Rare but Important
Adenocarcinoma, Lacrimal
Hemangiopericytoma, Orbi

Less Common
Dermoid and Epidermoid, Orbit
Mucocele, Sinonasal
Dacryocystocele
Subperiosteal Abscess, Orbit
Sarcoidosis, Orbit
Sjogren Syndrome, Orbit
Lacrimal Cyst
Adenoid Cystic Carcinoma, Lacrimal
Malignant Mixed Tumor, Lacrimal
Rhabdomyosarcoma, Orbit
Sinonasal Malignancy
Metastasis, Orbit
Neurofibromatosis Type 1, Orbit
Fibrous Dysplasia, Orbit
Orbital Cavernous Hemangioma
Infantile Hemangioendothelioma, Orbit
Venous & Lymphatic Malformations
Lymphatic Malformation, Orbit
Venolymphatic Malformation, Orbit
Venous Varix, Orbit


筋円錐外の腫瘤性病変の鑑別疾患には、ここに挙げたようにたくさんある。
背景疾患のサルコイドーシスも鑑別に挙げられるが、今回は急性発症・吸収値がかなり高いこと、から血腫が最も考えられる。

 

 Take-Home Points

・一元論に固執しない
・外傷はなくても静脈圧上昇でも眼窩骨膜下血腫は生じうる

 

参考文献
・AJR 2005;184:S2-S3
・JCAT 1994;18(4):549-551
・耳喉頭頚 2011;83(10):793-797
・EXPERT ddx head & neck: Orbit, 7-20

 

 

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Moderator: 日下部 将史