肺腫瘍源性塞栓性微小血管症 PTTM(pulmonary tumor thrombotic microangiopathy) |
画像所見 |
胸部HRCT |
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胸部CT |
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胸部造影CT(入院1日目) |
胸腹部造影CT(入院1日目)
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FDG-PET(入院4日目) |
入院後経過 |
入院1日目:
心電図、心エコーにて肺高血圧症の所見を認めた
肺血栓塞栓症を疑い、抗凝固療法を開始
安静時に鼻カニューレ3L/分の酸素投与を要した
入院4日目:
入院後より呼吸状態は徐々に悪化
安静時にリザーバ―付マスク10L/分の酸素投与を要した
入院5日目:
呼吸不全悪化のため死亡
原発巣検索のため胃カメラなど予定されていたが、翌日の入院5日目に呼吸不全悪化のため死亡した。
死因特定のため、剖検が施行された
病理組織(肺) |
病理組織(胃) |
診断
・Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)
・Adenocarcinoma of the stomach
PTTM |
【PTTMとは1)】
・1990年にHerbayらが確立した疾患概念
・肺動脈の微小腫瘍塞栓により肺高血圧症をきたす病態
・多くは原因不明のまま短期間で死亡する
・原発巣:胃癌が過半数を占める
・組織型:大半が腺癌。特に粘液産生性腺癌 (印環細胞癌、粘液癌) の頻度が高い
【PTTMの機序1) 2)】
➀末梢の肺動脈で腫瘍塞栓を生じ、周囲に血栓を形成
➁PDGFが筋線維芽細胞の増殖を促し、内膜が肥厚
➂肺動脈狭小化を来し、肺高血圧症を惹起
※PDGF;platelet-derived growth factor
【PTTMの進展経路3)】
・大静脈系へ直接浸潤→右心系→肺動脈
・所属リンパ節→胸管→上大静脈→右心系→肺動脈
【PTTMの画像所見】
〈CT〉
・右心系拡大や肺動脈拡張(右心負荷)
・肺動脈に明らかな血栓や塞栓を認めない
・びまん性粒状影、小葉間隔壁肥厚、肺動脈の数珠状拡張4)
〈FDG-PET〉5)
・両肺に多発する集積亢進
〈肺血流シンチ〉6)
・両肺に多発する欠損像
【PTTMの診断3)】
・一般的に生前診断は困難
・肺生検(経気管支的、CTガイド下)
・Swan-Ganzカテーテルを用いた肺動脈血細胞診
【PTTMの治療7)】
・確立された治療法はない
・抗癌剤治療、抗凝固療法、肺高血圧症に対する治療
Take Home Message |
原因不明の低酸素血症や肺高血圧症を呈する疾患として、PTTMも考えておく必要がある
参考文献
1. von Herbay A. Cancer 1990; 66: 587-592.
2. 神崎由起子. 診断病理 2005; 22: 21−24.
3. 鈴木学. 日本呼吸器学会誌 2007; 45: 560−565.
4. Franquet T. AJR 2002; 179: 897-899.
5. Tashima Y. Clinical Nuclear Medicine 2009; 34: 175-177.
6. Kitamura A. Case Reports in Pulmonology 2013; article ID259080.
7. 山口航. 日本呼吸器学会誌 2012; 1: 231−236.
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