精上皮腫 seminoma |
画像所見:造影CT |
画像所見のまとめ
・腹腔内、骨盤腔内正中にΦ16cmの腫瘤性病変
・腫瘤辺縁平滑、内部は左側でほぼ均一な軽度の造影効果を有し、右側は造影不良域で変性/壊死によると思われる
・腎レベル左側傍大動脈領域に腫大リンパ節あり
・腫瘤左側から脈管様構造が左腎静脈に連続
・左精巣・精索が見られない
鑑別疾患 |
・胚細胞性腫瘍
・リンパ腫
・GIST
・血管肉腫
臨床経過 |
・画像診断上、胚細胞腫瘍やリンパ腫が疑われた。
・臨床上は、精巣腫瘍摘出後という既往もあり、リンパ腫を疑い生検施行。
・CDDP,VP-16,BLM 3剤により化学療法を3クール施行。
・腫瘍マーカー陰転化。病勢評価のためにFDG-PET/CT施行
PET−CT |
・腫瘍は縮小したが、残存病変が見られたため、腫瘍摘出+後腹膜リンパ節郭清術施行された。
手術所見
・術前のCT検査で確認されていた膀胱上方の超鶏卵大の腫瘤を用手探索したところ、骨盤内に摘出されたはずの左精巣を認めた。
・腫瘤と周囲組織の癒着はなく、内鼠径輪で結紮切除摘出した。
・傍大動脈のリンパ節を一塊として郭清。
腎動静脈の裏、大動脈の裏のリンパ節も郭清した。
病理所見
・肉眼では精巣全域に及ぶ黄褐色調の均質な腫大を認める。被膜や精索への浸潤は明らかではない。
・組織では腫瘤のほぼ全域が線維組織に置換されており、血管増生や軽度の単核球浸潤を伴う。
あきらかな腫瘍細胞の残存は認められない。
・化学療法後のセミノーマとして矛盾しない所見です。
診断:停留精巣由来のセミノーマ (精上皮腫)
考察:精巣腫瘍について |
・15-40歳に好発、この年齢層の固形癌で最多
・有病率は1-2人/10万人
・無痛性陰嚢腫瘤が典型症状(>90%)
・陰嚢水腫、精巣上体炎と鑑別が必要
・手術+化学療法+放射線で高確率に完治
・高位精巣摘除術を行い、組織型を確認(生検は禁忌)
・肺・縦隔・後腹膜リンパ節、肝・骨への転移を検索する
・原発巣が自然退縮し解らなくなる場合が報告されている。
停留精巣について |
・発生率は満期産で3-4%、未熟児で30%
・3-9ヶ月くらいまでは自然下降が期待できる
・治療法は基本は陰嚢内への精巣固定術
・思春期以降は摘出術が第1選択
・将来的な癌化のリスク(正常の4-7倍)
・父性獲得率(両側停留精巣で50-70% 片側の場合ほぼ同等)
・精上皮腫との関連が報告されている
参考文献
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