レプトスピラ症 Leptospirosis |
所見のまとめ |
・両肺胸膜下を主体としたびまん性の微小粒状影〜粒状影(ランダム分布に見え、大きさ、濃度は不揃い)。
・両肺上葉主体のすりガラス影。
・両側肺尖部主体の小葉間隔壁肥厚。
・軽度の肝腫大。
・その他、胆道系、両下肢に明らかな異常なし。
鑑別診断 |
肺の画像所見からは
・非定型肺炎、ウイルス性肺炎
・悪性腫瘍の多発転移、癌性リンパ管症
・悪性リンパ腫
などが鑑別に上がる。
肺のびまん性陰影に黄疸、肝機能障害、腎機能障害を合わせると、
→レプトスピラ症(ワイル病)が鑑別にあがる。
※問診から職業は板前であり、職場でネズミをよく見かけ、水をまいて掃除していることが明らかになった。
経過 |
・受診時から敗血症性ショック、出血性肺炎、黄疸出血性レプトスピラ症の疑いで人工呼吸管理下で加療を開始した。
・呼吸不全、循環不全が進行し、他院転院の上、体外式膜型人工肺(ECMO)を導入し、持続的血液透析も併用した。
・血清学的にレプトスピラ症の診断が確定した後も加療を続け、9日間でECMOを離脱し、当院に再度転院となった。
・抗生剤の治療を継続し、28日後に全身状態良好となり、退院となった。
レプトスピラ症 |
・レプトスピラはスピロヘータ目スピロヘータ科のグラム陰性菌。
・ネズミなど多くの哺乳類が保菌動物となる人獣共通感染症。
・ネズミの尿に汚染された土や水に接触することにより感染する。
・日本では年に20例程報告がある。
・昔は農業など、現在はカヌーなどの川でのレジャーによる感染が多い。
・軽症では感冒様症状。
・重症型のレプトスピラ症(=ワイル病)は黄疸・出血傾向・蛋白尿を3主要徴候とする。
・レプトスピラ症の2-7割で肺病変を認める。
・肺胞出血に伴う血痰と呼吸困難が主症状となる。
・近年、ニカラグアやブラジルでのoutbreakにより、severe pulmonary hemorrhage syndrome (SPHS) が注目されている。
・SPHSでは死亡率は50%を超える。
レプトスピラ症の肺所見
・下葉優位、びまん性、対称性の分布が多い。
・すりガラス影(75%)
・粒状影(75%)
・すりガラス結節(56.25%)
・Consolidation(43.75%)
・Crazy-paving pattern(18.75%)
・小葉間隔壁肥厚(18.75%)
・両側胸水(12.5%)
Take home message |
肺のびまん性陰影+黄疸のときはレプトスピラ症を念頭に置く。
診断に迷ったときはもう一度臨床情報に戻ってみると解決することがある。
参考文献
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