入院後経過
・開胸右上葉切除術(ND 2a)施行。
・翌日(1POD)右肺の透過性低下を認める。
・自覚症状は術後より続く軽度の呼吸苦のみ。
Vital sign(1POD)
BT 37.2 ℃, HR 84 bpm, BP 120/76 mmHg, RR 16 /min
血液検査(1POD)
・動脈血液ガス(Room Air)
PH 7.468, PaO2 88.8 mmHg, PaCO2 39.1 mmHg, PaHCO3− 27.7 mmHg, B.E. 3.8, SaO2 98.4 %
・血算 WBC 10,600 /μl, Hb 9.5 g/dl, Plt 184×103 /μl
・生化学 TP 5.3 g/dl, CK 1360 U/l, CRP 10.6 mg/dl
その他はほぼ正常値
術前 胸部単純CT |
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胸膜引きつれを伴う原発巣
(3 cm大の腺癌) |
術直後(手術室) |
1POD |
胸部単純写真(AP) |
胸部単純写真(AP) |
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中葉の気管支を同定できず |
縦隔側の胸膜は肥厚(うっ血) |
画像所見のまとめ
・手術直後に拡張良好だった中葉が、翌日に透過性低下。
・中葉に限局し、全体が網状影。
・中葉気管支は同定できない。
・胸膜は一部で肥厚(うっ血疑い)。
気管支鏡(1POD) |
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中葉気管支は閉塞し、
ファイバーが通過せず |
再手術
中葉捻転の診断で、再開胸した。
中葉は赤黒く固く腫張し、肝臓様であった。
肺門部で180度、時計回りに捻転していた。
これを解除して20分ほど待つも、うっ血の改善を得られなかった。
気管内の出血が始まった為、中葉を切除した。
摘出標本
中葉は緊満し、暗赤色調。うっ血と、
肺胞腔内・胸膜への広範な出血。急性期の肺梗塞像。 |
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右上葉(pT1N0) |
中葉 |
肺捻転のまとめ
・手術や外傷が誘因。多くは無症状。
・頻度は、葉切除後の0.089〜0.3 %と報告。呼吸器外科医の30 %が経験。右肺上葉切除後の中葉捻転が最多。
・右上葉切除時は予防的に中葉と下葉を固定。
・肺門部で血管が締め付けられ、肺梗塞。治療は大抵が捻転肺の切除。
肺捻転の画像所見
・手術や外傷後に肺葉の急激な透過性低下
・血管影の異常な走行(inverted vascular pattern)
肺捻転の画像所見
・手術や外傷後に葉の急激な透過性低下
・血管影の異常な走行(inverted vascular pattern)
・虚脱した肺葉や、肺門の位置異常
・気管支の狭小化
参考文献 |
- Moser ES, Proto AV. Lung torsion: case report and literature review. Radiology 1987; 162: 639-43.
- Felson B. Lung torsion: radiographic findings in nine cases. Radiology 1987; 162: 631-8.
- Cable DG, Deschamps C, Allen MS, et al. Lobar torsion after pulmonary resection: presentation and outcome. J Thorac Cardiovasc Surg 2001; 122: 1091-3.
- Kanemitsu S, Tanaka K, Suzuki H, et al. Pulmonary torsion following right upper lobectomy. Ann Thorac Cardiovasc Surg 2006; 12: 417-419.
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