血管内大細胞型B 細胞性リンパ腫 intravascular large B cell lymphoma |
【現病歴】 | 1ヶ月前 | 39℃台の発熱と全身倦怠感あり |
20日前 | 労作時呼吸困難 ※階段昇降時の息苦しさ | |
初診時 | 胸部CT撮像 | |
4日後 | 呼吸困難著明となる | |
1週間後 | 診断目的で気管支鏡検査を施行(TBLB 施行) |
【嗜好品】喫煙:なし 飲酒:ビール 350ml/日
【身体所見】 | 身長165.2cm | 体重49.7kg | 体温36.7℃ |
意識清明 | 眼球眼瞼結膜貧血黄疸なし | リンパ節触知せず | |
心音整雑音なし | 呼吸音清雑音なし | 腹部平坦腫瘤を触知せず |
【血液検査所見】 | WBC 2370 /μl | RBC 454 万/μl | Plt 10.4 万/μl | AST 36 IU/l | ALT 19 IU/l |
ALP 299 IU/l | LDH 2432 IU/l(LDH2 48% LDH3 31%) | ||||
TP 7.0 g/dl | T-bil 1.1 mg/dl | CRP 0.16 mg/dl | BUN 12 mg/dl | UA 4.1 mg/dl | |
Cr 0.61 mg/dl | BNP 7.0 pg/ml | KL-6 128 U/ml | sIL-2R 1090 U/ml |
QFT-TB-2G<0.05 IU/ml | βーDグルカン<6.0 pg/mg |
▼ FDG-PET CT |
肺のSUVmax=3.3 |
臨床、画像のまとめ・LDH や sIL-2R の異常高値→悪性リンパ腫疑い
・CT、FDG-PETの異常所見の広がり→両側肺に広範囲にわたり浸潤
・ごく淡いすりガラス影の解釈は?→病理組織学的背景を反映しているか?
【病理組織像:TBLB】 |
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左:HE染色弱拡大像 右:HE染色強拡大像 |
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左:免疫染色(CD20) |
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腫瘍細胞の免疫染色:CD5(-)/CD10(-)/CD20(+)/Bcl2(+)/Bcl6(+) |
【病理組織診断】血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(Intravascular large B cell lymphoma IVL)
血管内大細胞型B細胞性リンパ腫・血管内に選択的に増殖する節外性リンパ腫
・本邦では全悪性リンパ腫の1%以下であり稀な疾患
・性差なし、60歳以上の高齢が多い
・標的臓器:皮膚、中枢神経、肺、肝、脾、骨髄・・・
・臨床症状:発熱等B症状、肝脾腫、貧血、血小板減少
・急激に進行し、診断が困難で予後不良
・近年、疾患概念の浸透により生検などで早期診断がなされるようになり、リツキシマブ併用化学療法により治療成績も向上
肺血管内リンパ腫の画像所見すりガラス影
小葉中心性結節
広義間質陰影;小葉間隔壁、気管支血管束肥厚
腫瘤、楔状陰影
Air trapping
所見無し
CT上びまん性すりガラス影を示す代表的鑑別疾患 |
カテゴリー | 鑑別疾患 | 問題点 |
日和見感染症 | カリニ肺炎 CMV感染症 HSV感染症 その他 | 発熱・呼吸困難の割りにCRP正常・炎症反応陰性 |
慢性間質性疾患 | 過敏性肺炎 特発性間質性肺炎:DIP RBILD NSIP LIP サルコイドーシス |
慢性疾患の割りに呼吸機能異常が軽度 KL6正常範囲内 |
急性肺胞性疾患 | 肺水腫:心原性 ARDS その他 |
心機能正常 KL6正常 |
その他 | 薬剤性肺障害 |
投薬歴無し |
Isolated Diffuse Ground-Glass Opacity in Thoracic CT: Causes and Clinical Presentation:Miller WT, Shah RM
AJR 2005;184:613-622
Take Home Message1.肺IVL は稀であり、CT上肺のびまん性すりガラス影を示す疾患として、鑑別に上げることは難しいが・・・
2.炎症反応が判然とせず、肺炎など感染症としては所見に乏しい
呼吸機能検査の異常が軽度、慢性呼吸器疾患としては所見に乏しい
心機能に明らかな異常は見られない
既往歴、患者背景などに特記すべき所見が無い
3.LDH値上昇が顕著
4.肺IVLも念頭に置いてsIL-2R値を測定するように勧める
悪性リンパ腫の可能性が高まれば肺生検を勧める
5.早期診断とR-CHOP で治療成績も向上しつつある
【本例の治療後経過】
R-CHOPを8コース施行→臨床症状消失
LDH 197 IU/l 正常範囲内
sIL-2R 321 U/ml 正常範囲内
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