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第329回東京レントゲンカンファレンス
2011年6月23日
症例1 50歳代 男性
    血管内大細胞型B 細胞性リンパ腫
intravascular large B cell lymphoma


【現病歴】 1ヶ月前 39℃台の発熱と全身倦怠感あり
  20日前 労作時呼吸困難 ※階段昇降時の息苦しさ
  初診時 胸部CT撮像
  4日後 呼吸困難著明となる
  1週間後 診断目的で気管支鏡検査を施行(TBLB 施行)

【嗜好品】喫煙:なし 飲酒:ビール 350ml/日

【身体所見】 身長165.2cm 体重49.7kg 体温36.7℃
  意識清明 眼球眼瞼結膜貧血黄疸なし リンパ節触知せず
  心音整雑音なし 呼吸音清雑音なし 腹部平坦腫瘤を触知せず

【血液検査所見】 WBC 2370 /μl RBC 454 万/μl Plt 10.4 万/μl AST  36 IU/l ALT 19 IU/l
  ALP 299 IU/l LDH 2432 IU/l(LDH2 48% LDH3 31%)    
  TP 7.0 g/dl T-bil 1.1 mg/dl CRP 0.16 mg/dl BUN 12 mg/dl UA 4.1 mg/dl
  Cr 0.61 mg/dl BNP 7.0 pg/ml KL-6 128 U/ml sIL-2R 1090 U/ml  
  QFT-TB-2G<0.05 IU/ml βーDグルカン<6.0 pg/mg

 

FDG-PET CT

肺のSUVmax=3.3

臨床、画像のまとめ・LDH や sIL-2R の異常高値→悪性リンパ腫疑い
・CT、FDG-PETの異常所見の広がり→両側肺に広範囲にわたり浸潤
・ごく淡いすりガラス影の解釈は?→病理組織学的背景を反映しているか?

【病理組織像:TBLB】

  左:HE染色弱拡大像
右:HE染色強拡大像
 

左:免疫染色(CD20)
右:免疫染色(CD34)

腫瘍細胞の免疫染色:CD5(-)/CD10(-)/CD20(+)/Bcl2(+)/Bcl6(+)

 

【病理組織診断】血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(Intravascular large B cell lymphoma IVL)

 

血管内大細胞型B細胞性リンパ腫・血管内に選択的に増殖する節外性リンパ腫
・本邦では全悪性リンパ腫の1%以下であり稀な疾患
・性差なし、60歳以上の高齢が多い
・標的臓器:皮膚、中枢神経、肺、肝、脾、骨髄・・・
・臨床症状:発熱等B症状、肝脾腫、貧血、血小板減少
・急激に進行し、診断が困難で予後不良
・近年、疾患概念の浸透により生検などで早期診断がなされるようになり、リツキシマブ併用化学療法により治療成績も向上

 

肺血管内リンパ腫の画像所見すりガラス影

小葉中心性結節
広義間質陰影;小葉間隔壁、気管支血管束肥厚
腫瘤、楔状陰影
Air trapping
所見無し

 

CT上びまん性すりガラス影を示す代表的鑑別疾患

カテゴリー 鑑別疾患 問題点
日和見感染症 カリニ肺炎 CMV感染症 HSV感染症 その他 発熱・呼吸困難の割りにCRP正常・炎症反応陰性
慢性間質性疾患 過敏性肺炎
特発性間質性肺炎:DIP RBILD NSIP LIP
サルコイドーシス
慢性疾患の割りに呼吸機能異常が軽度
KL6正常範囲内
急性肺胞性疾患

肺水腫:心原性 ARDS その他
びまん性肺胞出血

心機能正常 KL6正常
喀血など臨床症状無し

その他

薬剤性肺障害
肺胞タンパク症
器質化肺炎
気管支肺胞上皮癌
IVL

投薬歴無し
KL6正常範囲内
広範な病変の割りに均一でごく淡いすりガラス影

Isolated Diffuse Ground-Glass Opacity in Thoracic CT: Causes and Clinical Presentation:Miller WT, Shah RM
AJR 2005;184:613-622

 

 

Take Home Message1.肺IVL は稀であり、CT上肺のびまん性すりガラス影を示す疾患として、鑑別に上げることは難しいが・・・
2.炎症反応が判然とせず、肺炎など感染症としては所見に乏しい
  呼吸機能検査の異常が軽度、慢性呼吸器疾患としては所見に乏しい
  心機能に明らかな異常は見られない
  既往歴、患者背景などに特記すべき所見が無い
3.LDH値上昇が顕著
4.肺IVLも念頭に置いてsIL-2R値を測定するように勧める
  悪性リンパ腫の可能性が高まれば肺生検を勧める
5.早期診断とR-CHOP で治療成績も向上しつつある

【本例の治療後経過】
R-CHOPを8コース施行→臨床症状消失
LDH    197 IU/l  正常範囲内
sIL-2R   321 U/ml  正常範囲内

 

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Moderator:冨永 循哉