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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第383回症例症例:呈示
第 383 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年4月26日]
症例6 70歳代 男性
非定型肺カルチノイド
Atypicalcarcinoid tumor of the lung

 

 画像所見

CT Key画像-1
・右肺上葉S3に大小の混在する多発結節および石灰化を認める。
・末梢側では結節は癒合し腫瘤を形成している。一部無気肺を伴う。
・葉・区域気気管支分岐部付近では偏在性石灰化を伴う結節を認め、気管支の圧排性変化を伴っている。

CT Key画像-2(単純CT、造影CT動脈相、造影CT実質相)
・造影早期相から腫瘤内部に不均一な造影効果を認める。
・後期相においても遷延性造影効果が見られる。

CT Key画像-3
・両側副腎に腫大が見られる。

胸部CT経時的変化
・5年の経過で著変なし。


 鑑別診断

石灰化を伴う肺腫瘤
肺カルチノイド腫瘍(に伴うクッシング症候群)
  ー石灰化を伴う区域性の多発腫瘤/結節
  ー葉・区域気気管支分岐部付近では偏在性石灰化を伴う結節を認め,気管支の圧排性変化を伴っている
  ー造影CTで早期相から造影効果あり
  ー5年の経過で著変なし
  ー両側副腎腫大+副腎皮質ホルモン高値
  ー肺結節の経過は非常に長い(約25年)が、症状は最近出現している。
  ーカルチノイド腫瘍だけにしては点状あるいは結節状石灰化が目立つ印象。
・硬化性血管腫(sclerosing hemangioma/pneumocytoma)
・過誤腫
・陳旧性肺結核
・原発性肺癌
・肺転移

 

追加検査

ソマトスタチン受容体シンチグラフィー  
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血漿ACTH濃度 146pg/mL
参照値:7.2〜63.3 

 

 

 病理所見

・単紡錘形〜多核の胞体と類円形〜長円形濃染核を有する増生細胞を認める。
・核分裂像: 2/10HPF
・細胞表面マーカー

 ・TTF-1 week +
 ・AE1/3 +
 ・Synaptophysin ++
 ・Vimentin -
 ・ACTH +
img

病理診断:非定型肺カルチノイド腫瘍(Atypical pulmonary carcinoid tumor)

 

病理所見-2

・カルチノイド成分に接して、硬化性血管腫を連想させる中型の円形細胞と好酸性細胞質を持つ細胞が
 充実性ないし乳頭状に増殖している。
・分化度の高い線毛上皮や腺上皮、石灰化/骨形成も混在する。
・細胞表面マーカー

 ・TTF-1 +
 ・AE1/3 week +
 ・Synaptophysin -
 ・Vimentin ++
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最終診断:硬化性血管腫に合併した 非定型肺カルチノイド腫瘍 および 異所性ACTH産生症候群


 肺カルチノイド腫瘍

肺の神経内分泌腫
良性(カルチノイド)
・定型カルチノイド腫瘍
・非定型カルチノイド腫瘍
悪性(神経内分泌癌)
・大細胞神経内分泌癌(LCNEC)
・小細胞癌
Travis WD, et al. J Thorac Oncol 2015;10(9):1243-1260.

カルチノイド腫瘍:CT所見
・境界鮮明な円形・類円形の腫瘍
・石灰化(偏在性パターン)を伴う事が多い
・葉・区域気気管支分岐部付近に多く圧排性変化を伴う
・約20%は肺野部腫瘤であり気管支の閉塞性変化を伴う
・右側にやや多い(60%)

カルチノイド腫瘍:その他画像所見
・MRI:非特異的(DWIに関するデータなし)
・FDG-PET CT:感度低く、偽陰性が多い
・ソマトスタチン受容体シンチ(111In octreotide):
  局所診断、転移検索に有用(感度80~93%)
・123I-MIBGシンチ:
  ソマトスタチン受容体シンチと比較し感度低い
Benson RE, et al. Radiographics 2013;33(6):1631-1649.
Chong S, et al. Radiographics 2006;26(1):41-57.

カルチノイド腫瘍:臨床症状
・Cushing症候群(約2%)
・カルチノイド症候群(0.7%: cf 8.5% 消化管病変)
 ー肝転移症例で生じやすい(2-5%)
 ーセロトニン、ブラジキニンの放出による
 ー皮膚紅斑、気管支攣縮、下痢、右心不全
 ー診断:尿中5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)

 

 肺硬化性血管腫

Pulmonary sclerosing hemangioma/pneumocytoma

[好発年齢]40歳代 女性

[症状]ほとんどが無症状だが、有症状時は血痰が多い
U型の肺胞上皮由来と言われている

[分類]出血性、血管腫様硬化性、充実性,乳頭状の4種類だが大抵はそのうちの3つ以上が混在している

・孤発性が95%で半数が下葉に生じる
・予後は良好だが、まれに再発やリンパ節転移を来すため、臨床的には悪性腫瘍に準じて扱う

肺硬化性血管腫:画像所見
・境界明瞭な1-5cm大の充実性結節
・内部に嚢胞を来すこともある
・石灰化は18-30%で中心性が多い
・結節内の三日月状の空洞形成や周囲に気腫性変化を来すことがあるのが特徴
・造影効果を示すことが多い
Zu et al. Ann Thorac Surg 2010;90:e45

 肺硬化性血管腫とカルチノイド腫瘍

・硬化性血管腫と他の肺腫瘍(肺癌、異型腺腫様過形成、肺転移など)との合併の報告あり
・カルチノイド腫瘍との合併の報告も少数あり
Cho HJ, et al. Thorac Cancer 2017;8(4):372-375.
Kim Y, et al. Diagn Pathol 2013;8:97.
Wang Y, et al. World J Surg Oncol 2014;12:209.

 Take home message

・石灰化を伴う肺腫瘤の鑑別にカルチノイド腫瘍、硬化性血管腫を加える。
・硬化性血管腫は他の肺腫瘤を合併することがある。

 


参考文献

  • Travis WD, et al. J Thorac Oncol 2015;10(9):1243-1260.
  • Benson RE, et al. Radiographics 2013;33(6):1631-1649.
  • Chong S, et al. Radiographics 2006;26(1):41-57.

 

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Moderator: 濱本 耕平