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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第393回症例 症例:呈示
第 393 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年6月27日]
症例8 70歳代 男性
頸部郭清術後の鎖骨骨折
clavicle fracture after neck dissection

 

 画像所見まとめ

CT
・術前は異常なし。
・術後CTで右鎖骨近位端に骨折と骨硬化、腫瘤形成。周囲に骨片、軟部濃度上昇、淡い造影効果あり。
MRI
・T2WI、STIRで辺縁が低信号、中心が高信号な辺縁不整な腫瘤。
・造影T1WIで辺縁に造影効果あり、中心部は低信号。
・DWIで全体的に淡い高信号。脂肪含有はない。

 

術前単純/術後単純/術後造影  
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T2WI cor/STIR cor 造影T1WI cor/造影T1WI
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DWI/in-phase/opposed-phase  
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 鑑別診断

・喉頭癌骨転移 → △   
・感染性骨髄炎 → △   
・外傷性骨折 →× 
・放射線治療後骨折 →×

 

診断:頸部郭清術後の鎖骨骨折
病理所見:肉芽組織、軽度の炎症、出血 → 機械的刺激に基づく変化。悪性所見なし

 

 

 頸部郭清術後の鎖骨骨折

・頸部郭清術後のまれな合併症で発症率は0.4〜0.5%。
・頸部郭清術は、根治的、保存的、選択的の3つに 大別されるが、いずれの場合でも生じうる。
・原因は複数の説があるが、確定には至っていない。
  (放射線照射による虚血、胸鎖乳突筋切除、副神経切除による僧帽筋の筋力低下など)
・郭清後は平均4ヵ月で発症するとの報告がある。
Kanda T et al. JJR 2014; 32
Fujimoto.K et al. BJR 2019; 92

臨床所見では病変部に発赤、腫脹、疼痛を 認めることもあるが、無症状の場合もある。
画像所見では、
・骨折は鎖骨近位部に認められる
・骨折部のCT吸収値上昇
・骨折部に軟部濃度腫瘤の形成、液体貯留
・周囲に骨片が存在
・骨溶解は生じない
・FDGの淡い集積(SUVmax1〜5)

 

 

 take home message

・頸部郭清後の鎖骨近位部骨折は、本症例も鑑別となる。
・画像では骨の吸収値上昇、軟部腫瘤形成、骨片の存在が特異的な所見である。

 

 


参考文献

  • Kanda T et al. Insufficiency fracture of the clavicle after neck dissection: imaging features. Jpn J Radiol (2014) 32: 172-178
  • Fujimoto.K et al. Clavicle fracture following neck dissection: imaging features and natural course. Br J Radiol 2019; 92: 20190054

   
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Moderator: 武井 洋平