SAPHO 症候群 SAPHO(synovitis-acne-pustulosis-hyperostosis ostemyelitis)syndrome |
画像所見のまとめ |
・両側鎖骨と第1肋骨内側端と胸骨柄に骨硬化と骨過形成。
・両側胸鎖関節、第1胸肋関節に骨性強直がある。
・周囲軟部組織に著明な腫脹あり。
・右胸膜と心外膜に肥厚を認め、右胸水と心嚢液貯留あり。
・下位胸椎には終板・隅角に骨硬化あり、椎体前面に上下に連続する骨棘形成あり。
診断:胸水と心嚢液貯留を伴ったSAPHO症候群(後に掌蹠膿疱症の存在も確認された)
SAPHO症候群 |
・1987年にChamotによって報告
・膿疱性皮膚病変に合併した骨関節疾患を特徴とする
・Synovitis(滑膜炎)、Acne(ざ瘡)、Pustulosis(膿疱症)、Hyperostosis(骨化過剰症)、Osteitis(骨炎)の
頭文字をとって命名
・病因は諸説あるが、弱毒細菌感染に伴う自己免疫反応説が有力視されている
・性差:なし(やや女性に多いとする報告もあり)
・好発年齢:30〜50歳台
・症状:前胸部痛が最多
・リウマチ因子は通常陰性、HLA-B27との関連もなし
・治療はNSAIDsやステロイド、MTX、生物学的製剤等
Benhamouによる診断基準 | |
診断項目 |
1.重症のざ瘡に伴う骨関節病変 |
判定 |
上記4項目中1項目を満たし、下記除外項目がない場合に診断される |
除外項目 |
化膿性骨髄炎、感染による関節炎、感染性掌蹠膿疱症、手掌角化症、 |
診断基準によると、特徴的な骨病変が存在すると皮膚病変がなくてもSAPHO症候群と診断できることになる
画像所見 |
前胸部病変
・胸肋鎖関節病変(65〜90%)
・肋鎖関節、胸鎖関節、上部の胸肋関節、肋軟骨、胸骨柄体部関節
・骨炎の所見
= 骨硬化・骨膜反応・骨過形成・付着部炎・骨性強直
・周囲軟部組織の腫脹もあり、高度な例では腫瘍様に見えることもある
脊椎病変
・胸椎病変が最多で、頸椎病変は稀
・病変は3型に分けられる
➀ non-specific spondylodiscitis type 終板と隅角から病変が始まる
➁ osteosclerosis type 椎体のみに骨硬化
➂ paravertebral ossification type 靭帯骨棘
➀ non-specific spondylodiscitis typeと ➂ paravertebral ossification typeの所見が混在
本例の頭蓋骨の病巣は不動関節である冠状縫合に沿って存在。
冠状縫合の骨関節炎が主体となり、隣接する筋・硬膜に波及
SAPHO症候群と随伴所見・合併症 |
・比較的有名なのはCrohn病,潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患との合併
・今回の症例のように胸水貯留を認めた報告は少なく検索しえた範囲では数例程度の報告のみであり稀な病態と考えられる
・また肺野病変を伴った報告も見られるが、こちらも数例程度の報告があるのみ
自験例 |
50歳代、男性 発熱、前胸部痛 |
この症例は化膿性胸鎖関節炎(MSSA検出)であったが前胸部の炎症が肺野まで波及することがある点に注意 |
結語 |
SAPHO症候群の前胸部病変の炎症波及により、胸水や心嚢液貯留、肺野に炎症所見を伴うことがある
日常臨床で、前胸部痛がありこれらの所見を認めた場合には、頻度は稀だがSAPHO症候群を除外することが必要
参考文献
・貫井ら:両側胸水を認めたSAPHO症候群の1例. 内科, Vol. 113(5):965-968, 2014.
・柴田ら:Anaphylactoid purpuraを併発し、胸水を認めたSAPHO症候群の1例. 西日本皮膚科, Vol 71(3):355, 2009.
・植松ら:硬膜・頭頂骨・側頭筋病変をきたし高度の頭痛で発症したSAPHO症候群の1例. 臨床神経, 52(2):106-110, 2012.
・Jaime F et al:Pleural effusion with the SAPHO syndrome. Chest 120(5):1752, 2001.
・Vaile JH et al:SAPHO syndrome : a new pulmonary manifestation? J Rheumatol 22(11):2190-1, 1995.
・Rvelli A et al:SAPHO syndrome and pulmonary disease. J Rheumatol 23(8):1482-3, 1996.
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