頭頸部放線菌症 cervicofacial actinomycosis |
身体所見 |
画像所見まとめ |
【CT】
・左上顎洞外側に軟部組織濃度。
・境界比較的不明瞭で辺縁不整。
・乳頭状の形態。
・病変内部に脂肪織が残されている。
・骨や皮膚には明らかな変化は無い。
・リンパ節腫脹は認めない。
【MRI】
・辺縁不整、境界不明瞭。
・T1WIで筋と等信号。
・T2WIでは淡い高信号主体だが、一部低信号が混在。
・均一で強い造影増強効果と軽度の拡散制限。
・CT時から増大あり、皮膚に瘻孔を形成している
病変の拡大 | |
単純CT軸位断 軟部条件 | T2WI 軸位断 |
皮膚への瘻孔 | |
脂肪抑制Gd造影T1WI 軸位断 | 脂肪抑制Gd造影T1WI 冠状断 |
鑑別診断 |
・左頬部皮下に非特異的な信号を示す腫瘤を形成する。
・明らかな増大傾向を示す。
・悪性腫瘍(上顎歯肉癌、悪性リンパ腫)
・抗酸菌症
・放線菌症
本症例の特徴
・辺縁不整・境界不明瞭で浸潤性に広がっていく皮下病変。
・右眼窩内炎症性偽腫瘍にてステロイド10mgの内服中。
・画像と臨床情報を合わせ、放線菌症が疑われる。
生検結果 |
HE染色(弱拡大)/HE染色(強拡大) ・経皮的に左頬部皮膚/皮下を生検。 →放線菌(Actinomyces)の菌塊と好中球浸潤を認める。 |
診断
頭頸部放線菌症
Cervicofacial actinomycosis
放線菌症 |
・Actinomycs speciesによる慢性化膿性感染症。
・最も多い原因菌はAcrinomyces israeliiとされる。
・口腔・腸管・女性器の常在菌。
・通常は病原性を持たないが、口腔内損傷や全身性の免疫低下を契機に病原性を獲得する内因性感染。
・頭頸部(60%)、胸部(20%)、腹部骨盤部(20%)
・治療は(大量)ペニシリン投与。
・予後良好。
頸部放線菌症の画像診断
Park JKらの報告(参考文献2)による7例の検討では、
・嚢胞を伴わない軟部腫瘤を形成(7例)
・境界不明瞭(5例)
・隣接する間隙の層/境界を超えて広がる(6例)
・均一で中程度の造影効果を持つ(6例)
・リンパ節腫脹(4例);境界明瞭で中等度の造影効果
・造影MRIの信号に特異的なものは無い。
Actinomycesの“infiltrative nature”
・境界を超えて浸潤していく。
・頸部に限らず、胸部・腹部骨盤部でも同様の性質を持つ。
・放線菌の持つ蛋白分解酵素によってこのような浸潤性を示すと考えられている。
浸潤性の発育 |
T2WI 軸位断 |
Take Home Message |
・ステロイド投与、糖尿病、その他免疫不全患者での口腔周囲の腫瘤をみたら放線菌症を鑑別にいれる。
・蛋白分解酵素によって、浸潤性の病変拡大をみせるという画像的特徴がある。
参考文献
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