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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第398回症例 症例:呈示
第 398 回 東京レントゲンカンファレンス[2022年11月24日]
症例1 50歳代 男性
播種性非結核性抗酸菌症
non-tuberculous mycobacteria

 

 右足とその他の所見のまとめ
         
今回   悪性リンパ腫 カポジ肉腫 骨髄炎
単純写真 異常所見なし
T1WI 筋肉よりも軽度高信号
T2WI・STIR 筋肉よりも軽度高信号
周囲の骨髄浮腫信号 あり
骨外病変 あり
そのほかの病変 脛骨遠位の異常信号
肝臓の腫瘤性病変 縮小傾向
脛骨近位部 膿瘍 × ×
         

 

 Kaposi肉腫

・好発部位 皮膚
 口腔粘膜、消化管、呼吸器、リンパ節の発症頻度が高いがほぼすべての臓器に発症しうる
 筋骨格原発の症例も報告はされている
 皮膚からの局所進展による二次的なものである
・単純写真 骨膜反応 骨びらん 骨破壊 
・MRI   骨髄の異常 軟部腫瘤

隆岡崎, 臨床画像. 2021;37:1220–33.
Restrepo CS, Radiographics. 2004;24:1029–49.
Restrepo CS, Radiological Society of North America; 2006;26:1169–85.

 経過
     
初回から1.5ヶ月後の造影MRI
img img
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fs CE T1WI sagi STIR cor STIR sagi

その後の経過
 足と膝の膿瘍の精査をした結果、M intracellulareが検出され、塗抹結果はガフキー5号であった。
 抗結核薬や抗菌薬が開始され、いずれの病変も徐々に縮小した。

 

診断: 骨髄炎 播種性非結核性抗酸菌症


 非結核性抗酸菌症

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Park JW. Bone Joint J. 2014;96-B:1561–5.
青木亜美. 呼吸器ジャーナル. 66:680–5.

 播種性非結核性抗酸菌症
 
【要因】
先天性 メンデル遺伝型抗酸菌易感染症(MSMD)
IFN-γ受容体1/2欠損  STAT-1欠損
IL12p40欠損     NEMO遺伝子異常
IL12受容体β1欠損   CYBB遺伝子異常
GATA2 遺伝子異常
(Mono-MAC症候群)
後天性 CD4減少
後天性免疫不全症候群(AIDS)
特発性CD4減少など
ステロイド・免疫抑制薬使用
抗IFN-γ中和自己抗体

青木亜美. 呼吸器ジャーナル. 66:680–5.

・原因菌  MACが最多
・CD4陽性T細胞<50/μl
  発症リスク↑
・Antiretroviral therapy(ART)
 導入後の免疫再構築症候群として発症した報告もある

AIDS(後天性免疫不全症候群)とは, 2022 Nov :https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html

・消化管を介して感染し、血行性播種により肝臓や脾臓、骨髄、リンパ節などに病変が形成される
・多発骨病変を認めることもある
・溶骨性、骨硬化性変化を呈する
・リンパ節腫脹、肝脾腫、小腸の肥厚 感度<50%
・画像で結節影や腫瘤などの病変を特定し、組織生検、血液培養で証明
青木亜美. 呼吸器ジャーナル. 66:680–5.
金城 和美. Kekkaku. 2015;90:457–61.
Pantongrag-Brown L. Clin Radiol. 1998;53:816.

【治療】
・内服薬としてはクラリスロマイシン、エタンブトール、リファマイシン系薬剤が中心に使用される 
・併存疾患に対する治療薬との相互作用や、菌に対する耐性によって使用薬剤は変わってくる
・外科的ドレナージの治療も行われる
・AIDSに合併した播種性NTM症は難治性のことが多く、予後不良とされている
木村 俊貴. 呼吸器ジャーナル. 2022;70:228–33.


【Penumbra sign】
・非造影T1強調画像で膿瘍腔の辺縁に線状の高信号を呈する所見 亜急性骨髄炎を疑う
・感度 27〜75% 特異度・陽性適中度・陰性適中度>90%
・骨髄炎と腫瘍との鑑別に有用
Jaramillo D. Radiology. 2017;283:629–43.
Meek RD. Radiographics. 2020;40:266–90.

初回から1ヶ月後の右足の単純MRI
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T1WI 矢状断 T1WI 軸位断

 

 まとめ

・AIDs患者でCD4が50/μl未満で、播種性非結核性抗酸菌症のリスクが上がる
・骨を含めた複数臓器に結節や腫瘤として出現することもある
・非造影T1強調画像のpenumbra signが骨髄炎と腫瘍の鑑別に有用となる

 


参考文献

  • 隆岡崎. 臨床画像. 2021;37:1220–33 Restrepo CS.
  • Restrepo CS. Radiographics. 2004;24:1029–49
  • Restrepo CS. Radiographics. 2006;26:1169–85.
  • Park JW. Bone Joint J. 2014;96:1561–5.
  • 青木亜美. 呼吸器ジャーナル. 2018;66:680–5.
  • 吉村 和久. 国立感染症研究所エイズ研究センター 2018.02.22
  • 金城 和美. Kekkaku. 2015;90:457–61.
  • Pantongrag-Brown L. Clin Radiol. 1998;53:816.
  • Jaramillo D. Radiology. 2017;283:629–43.
  • Meek RD. Radiographics. 2020;40:266–90.
  • 木村 俊貴. 呼吸器ジャーナル. 2022;70:228–33.

   
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Moderator: 向井 紀代子