第400回記念寄稿文
“サクラとフジ” 東京レントゲンカンファランス第400回を迎えて


齋田 幸久
第300回当番世話人(当時聖路加国際病院)

 看護婦さんの賃上げ要求ビラの貼ってある灰色のコンクリート通路を通ってゆくと、やがて、四角のコンクリート柱が目立つ広い空間にたどり着く。信濃町の慶應病院地下で開催された東京レントゲンカンファランスの会場である。東京レントゲンカンファランス発足2年目の1973年に、平松慶博先生に連れられて、河野敦先生、黒賦久先生と新人3人そろって出かけました。西岡清春先生(慶應)の音頭で、放射線科医のために始まった診断の勉強会である。放射線科第一世代と称すべき野辺地篤郎(聖路加)、田坂皓(東大)、鈴木宗治(東京医科歯科)、藤井正道(聖マリアンナ)、大沢 忠(自治医大)先生など関東の重鎮の先生方が並び、臨床の第一線には、蜂屋順一(関東逓信)、多田信平(慈恵)、石川 徹(聖マリアンナ)、土井 修(聖路加)、平松慶博(帝京)平敷淳子(埼玉)先生たち、その当時、新進気鋭の青年放射線科医であった輝く第2世代の諸先輩です。この当時、放射線科医は世間に知られることもなく、数年間隔でぽつりぽつりの入局という淋しい状況でした。CTもMRIもないカンファランスがどのように行われたかを言葉で説明するのは難しいが、確かに白熱した議論があり、その後の臨床放射線医診断の急激な発展の前触れであったことは確かだと思います。このカンファランスのお陰で、関東のわれわれ同世代の放射線科医は出発の時からすでに互いに知り合いでした。時は急速に流れ、2007年の第300回東京レントゲンカンファランスの当番世話人を小生がを任されることになります。この当時は新宿野村ビルで開催され、近代的雰囲気でした。300回目を特に意識することはなく、会をどう盛り上げるかに集中していました。Gamutで並べた鑑別診断を順番に消していく方法や、パターンによる診断をできるだけ避けたいと思いました。プロの画像診断医としての目のつけどころや診断の切り口を見せる技術を探りたいと思いましたが、なかなか難しい課題でもありました。当番世話人による即興読影も導入しましたが、振り返ると、勇気ある行動であったと感心します。甲田英一先生をはじめ、黒賦久、後閑武彦、似鳥俊明、蓮尾金博、福田国彦など世話人の各先生方にはご協力をいただき感謝しています。
 最後に“サクラとフジ”で文章をまとめたいと思います。“富士山を背景に満開の桜”を想像すると思います。サクラとフジはともに往時の日本を代表するフィルムブランドでした。小西六写真工業のさくらカラーと富士フイルムのフジカラーの2強の時代がありました。半世紀を経てなおこの2社と放射線科との関係は継続しており、東京レントゲンカンファランスは一貫して小西六写真工業の支援を受けてきたという経緯があります。今のコニカさんです。日本の放射線診断学はサクラとフジをはじめ沢山の方々に支えられてきたということを改めて認識します。ありがとうございました。東京レントゲンカンファランスはコロナ禍による休止期間を経てようやく400回を迎えました。楽しみながら勉強できる若手放射線科医の会としての役割を継続し、さらに発展し、画像診断の新しい歴史にさらに貢献することを期待します。1000回を目指せと応援しています。

第300回(2007年11月22日)TRC症例リスト
  1. 好酸球性肉芽腫症:Eosinophilic granuloma
  2. 胆管 IPN(胆管内乳頭状腫瘍):Intraductal papillary neoplasm of the bile duct
  3. 脊髄サルコイドーシス:Spinal cord sarcoidosis
  4. ウェジナー肉芽腫症:Wegener's granulomatosis
  5. 血管内悪性リンパ腫症:Intrarascular malignant lymphomatosis
  6. 家族性大腸腺腫に合併した甲状腺癌 大腸癌 卵巣転移:Familial polyposis
  7. 後腹膜神経節細胞腫:retroperitoneal ganglioneuroma
  8. 精嚢のう胞:Seminal vesicle cyst
  9. AFP(PIVKA-II)産生胃癌:AFP and PIVKA-II producing gastric cancer
*9症例目は特別企画:当番世話人による即興読影症例